月刊「沈思黙考」8月号 – ホッとする言葉。

ふとした瞬間に出会ったいい言葉。

今回は、永江朗さんの書評から。

◇写真家、上田義彦の「at Home」。

本作は彼自身の家族を撮った写真集。

最後にはこう記されている。

「一刻、一刻、過去となり、忘れ去られてしまう運命にある

なんでもない日常の中に、二度と見ることの出来ない、

大事な小さなほほ笑みがある。

写真はそれを鮮明に記憶してくれる。」

「小さなほほ笑み」は「幸福」と呼び変えてもいいだろうし、

「人生」と言ってもいい。なざなら、幸福は状態(瞬間)ではなく、

過程(一定の幅を持った時間)のことだから。

(永江評)

「小さなほほ笑み」を大事にするっていいですね。

静かで、暗めのトーンの写真。

きっと、そこには鮮やかな色があるに違いありません。

◇保坂和志の「途方に暮れて、人生論」から。

××しなきゃいけない、と考えた瞬間に人は不幸になる。

なぜならそれは現状を否定することだから。

しかし、希望を抱いたり、進歩したりすることが

そんなにエライことなのだろうか。

彼は、「それでじゅうぶんじゃないか」と言う。

それが人生を肯定することだから。

肯定できればいい。

(永江評)

現状を肯定しつつ、進歩する。

仮に進めていなかったとしても、「取り組んだ事実」を肯定する。

そうすることが、自然体でいるってことなのかもしれません。

永江さんのように、

短くて、簡潔で、でも的を得た言葉を書くためには、

いい言葉をたくさん読むことが必要なのかもしれません。

そう考えると、ゆっくり、かみ締めながら読書をする時間が必要です。

ここでも大事なのは「読まなきゃ」ではなく、「読める時に読もう」。笑

無理せず、自然に。

でも、過ぎ行く一瞬のほほ笑みは大事に、ね。