人との関わり、時間、深度について

このGW、皆様いかがお過ごしだったでしょうか。
僕の方は元々、大学生になった長女と一緒に信州蓼科から伊豆方面への旅行を計画していたのですが、予期せぬ体調不良で早々にキャンセル(娘ははじめたばかりのバイトが楽しいらしく、全然いいよ〜と言ってくれました)、主に自宅で連休を過ごしました。

体調も良くなってきたので、自宅からほど近い山や公園、植物園に毎朝のように通って、自然の中を歩き回りました。スマホは持っていましたが、主に花や木の写真を撮るだけ。SNSやネットニュースからもできるだけ離れるようにしていました。

あとは、本をたくさん読みました。
5冊以上読んだかな。印刷された本だけでなく、自分が今関わっているプロジェクトに関係しそうな論文(現代的コモンズ、自立分散化など)も含めるとかなりの文字数を読み、インプットしました。向き合ったのは、木々草花と、鳥のさえずり、風の音、自分の呼吸、そして、文献。静かだけれど、精神的にはとても充実した休暇でした。

僕は基本的に「人好き」なので、人との関わり合いやコミュニティの重要性を常に意識しながら生活していますし、コミュニティの運営や参加も積極的に行っています。でも、ちょっとだけ気分を変えてインプットに集中してみようと、SNSから少し離れてみたんです。

人との関わり方について面白い記事がありました。養老孟司先生は、子供の自殺という問題について日経ビジネスでの連載でこのように述べています。

「人間の相手ばかりしているから死にたくなる」

それにしても人といる時間が多すぎるんですよ
2万人くらいの死にたい人の話を聞いてきた坂口恭平さんは、人の苦労というのはすべて他人との関わり合いのなかにあるとしています。

「養老孟司氏、なぜ「他人が自分をどう思うか」を気に病むのか?」
日経ビジネス 2022/05/20

一部抜粋していますので、前後の文脈を読んでいただきたいのですが、僕自身はこの感覚に非常に強い共感を覚えます。人は何をしているのか、自分は人からどう思われているのか、なぜ「本人」がいるのに「本人確認するのか」。

働く環境、住む環境も「人との関わりの多さ」に影響を及ぼしているかもしれません。

この休暇中に読んだ本の中の一冊に、隈研吾さんの「建築家になりたい君へ」がありますが(建築学生の長女に買ってあげたのですが、パパが先に読んで一日で読了してしまいました)、その中で、資本主義経済は、生産性、効率性を求めた結果、都市にコンクリートのハコを作り、そこに人を閉じ込めた、という文脈があります。確かに人がロボットのように働くことで経済成長はしたかもしれない。でも、それは人にとって良いことだったのだろうか。ハコに閉じ込めて管理することは、人間にとって大きなストレスとなることも広く知られています。

コロナ禍が始まった2020年の春、慶応SFCの安宅先生は「開疎化」という言葉を良く使っておられました。それまでは「密」で「閉」が良しとされていましたが、感染症から身を守るためには、「開」で「疎」であるべきだと。これは物理的空間の話ですが、人と人との関わり方にも関係しそうです。巨大都市に人が集中し過ぎると、24時間人の存在を気にしながら生活しなければなりません。でも、人との関係も疎結合することで、良いバランスを取ることができるかもしれません。

人好きな自分ですが、この連休中はあえて、自然の中で自分と向き合うことによって、大きな成果が得られたと思います。これからキックオフする複数のプロジェクトの骨子と、すべきことが見えた気がするし、断片的に分散していた自分の考えがデフラグされ、整理されたように思います。

まだまだ試行錯誤が続くでしょうけど、より良い社会の実現に向けて微力ながら力を傾けていきたいと思っています。

大丈夫。全部そのまま受け入れよう

 この春は元気だな、ひょっとしたらこのまま行けるかもしれないな

そう淡い期待を抱いていた矢先に高熱がドカンと出て早2週間が経過。4月の発熱というのは2020年に始まり今年で4年目。春の風物詩のようなものだけど、今回は熱が高過ぎたことと倦怠感があまりに辛いので、精密検査を受けたら(コロナ、インフルはもちろん陰性)、別のものが見つかりそこから紹介状を持って色々な専門病院で検査続き。すべての結果が出るのはGW明け。

仕事も出張もトレランもゴルフも会食も、発熱と入院で全部キャンセル(関係各所ごめんなさい)。また今年もか・・・

落ち込もうと思えばいくらでも落ち込める。

予定のキャンセルや延期の連絡をさせていただくのは本当に申し訳ない気持ちになるし、5月のウルトラトレイルに向けては体調が悪いなりに昨年末から順調にトレーニングを重ねてきたのに、体重はこの2週間で5kg減り、体力も筋力も落ち、今は1kmも走れない。一ヵ月後のウルトラトレイルなんて想像すらできない。

でも、これが僕の人生だ!!

大丈夫。全部そのまま受け入れよう。僕の場合はありがたいことに持病の色々で心を鍛えていただいてる。健康じゃない人の気持ちも分かるし、動きたくても動けない人の気持ちも痛いほど分かる。人生、思い通りに行かないことの方が多いのも知っている。命は儚いし、いつどうなるかも分からない。だから、もし身体では負けても、心と想いだけは負けないように。そして、今出来ることを一生懸命するように。

幸い、今年は桜満開の時期が元気のピークだったので、近所の名所を何度も花見ランすることができたし、今回、色々と見つかったお陰で、徹底的に調べて治療してもらおうと思っています。そして、かならず復帰するし、一ヵ月後も、絶対走ってやる。

ベッドに横たわり天井を見上げながら、そう思って腐らず、たまに庭に出て、日ごとに開く花の数が増えていくモッコウバラにパワーをもらってます。何かを主張するわけでも求めるわけでもなく、必ず春には花を咲かせてくれる植物の強さってすごいですよね。あと、ずっと寝ているのもしんどいので、少しづつ仕事をしながら明治維新の本ばかり読んでいるのですが、今が令和だということを忘れそうです。(PCを打つのもしんどいので、このブログもかなりの時間を掛けて書いています)

お取引先や仲間たちにはご迷惑、ご心配をおかけしておりますが(激励のメッセージ、ととても励みになっています!)、必ず復帰しますので、もうしばらくお待ちください!!

思い(想い)の役割とは

どちらかというとロジカルに物事を考えてしまうタイプなので、精神論とか「思いの強さ」という考えは苦手だったんですね。でもWBCなどを見ていて思ったのは、思いの強さが最後は勝つということなんだなと。

というのも、ここ一番の勝負どころって誰にでも色々とあるじゃないですか。大切なプレゼンであったり、商談であったり、テストであったり、レースであったり。それに向けて事前にしっかりと準備して本番に備えるわけです。でも、当日になって体調不良やなにかしらの不可抗力が起こり、思い描いたような「完璧な状態」で臨めることの方が少ない。そこで、がっかりして意気消沈するか、諦めずに挑んでいくかが勝負の分かれ目になると思うんですよね。思いの強さは、ここで出てくるんだなと感じています。すごく漠然とした言い方ですが、思いが強いか弱いかでその先の未来が決まるんだなと思うんです。

4月という時期は、個人的に体調を大きく崩す時期でして、今年も先週末からガクンと来てしまいました(ブログの更新ができなかったのはそのためです)。今までと違うのは、単なる高熱だけではなく、精密検査の結果、来週から別の病院で検査入院までしなければならない事態になってしまったこと。病院の先生方が本当に親身になってくれて、早めに動いていただいて良かったなあと思っています。関係各所には予定のキャンセルや調整で多大のご迷惑をおかけしています。

なんだか予想もしないようなことが次々と襲ってくると、気持ちが前向きになれないんですよね。もともと計画どおり動きたい性格だし、キャンセルとか延期とかすごく嫌なので、なんでこうなるんだろと意気消沈して腐ってしまいそうな自分の気持ちと格闘しています。ここで冒頭の話に戻りますが、今こそ思い(想い)の強さが大切だなと。ピンチはチャンスといいますが、良い機会だと思って、自分でしっかり気持ちを前に持って行きたいと思っています。身体は仕方ないとして、心を鍛えることはどんな状況でもできますもんね。

答えを探すのではなく、問いを立てること

先月エントリーしたブログで、効率的、直線的、最短距離という言葉に何の魅力も感じないと書きました。その理由として、「一つのことに集中し、答えを探すことももちろん大切なのですが、一見遠回りと思えることに一生懸命時間を費やし楽しむことで、異なる要素が結びつき、良いアイデアが生まれたり、ビジネスの種を見つけたり、ボトルネックになっている問題の解決策のヒントが得られたり、新たな人との出会いがある」としたのですが、それに加えてもう一つ気付いたことがあります。

ChatGPTのようなgenerative AIが台頭してくると、答えを得ることはとても簡単になります。あれこれ考えたり、論文を漁ったり、調べたりしなくても、先行研究や論文データベースはすでに検索対象としてあるし、実際に起こった事実を考察して結論を出し、AIがそこから答えを自動的に生成してくれます。答えを得る作業に費やす時間は、ほぼ0になりつつある。つまり答えを探すという行為そのものは既に最短距離で実現できてしまうものだと思うのです。(ちなみに効率化に関しては、これを本気で実現すると働き手は不要になるので一部の資本家だけが儲かるというディストピアが生まれるだけです)

でも、問いを立てる、ということについてはどうだろう。

自分でなにかに関心を持ち、これは本当なのだろうか、他にもっと良い方法はないのだろうか、この課題を解決するにはどういうアプローチをすれば良いのだろうか。問いを立てる能力がこれからもっと必要になっていくのではないでしょうかね。前回の記事で、福沢先生や谷崎の本を読んでいると書きましたが、現代から見ると情報もモノも何もない明治維新前後や昭和初期の時代、彼らは常に「問い」を立てていることが分かります。その時代、自分で考え、選択肢を準備し、決定して行動しなければ何も起こらないし何も始まらないからです。

白秋共同研究所で研究と実践のテーマにしている「ウェルビーイング」は、まさにこの点を指摘しているのかもしれません。僕は専門家ではないので教えてもらったことだけを紹介すると、ウェルビーイングの構造は、まず「経済成長」「民主化」「社会的寛容」という社会的条件があり、その上で「働く/生きる上で選択肢から自己決定する」→「主観的な評価と体験」がウェルビーイングな状態である、ということです。

つまり重要なのは、自ら考え、自己決定をするということ。
そのためには答えをすぐに探そうとしたり、答えを見て判断するのではなく、問いを立てることが必要だということですね。これ、習慣化したいと考えています。

大丈夫。なんとかなる。

「大丈夫」という言葉は人を勇気づけますね。3/1は長女の高校卒業式だったのですが、来賓祝辞に登壇された神戸大学の副学長の言葉が素晴らしかったので紹介しておきます。

「皆さんにひとつ言葉を送りたいと思います。それは『大丈夫』です。色々と不安に思うこともあるかもしれませんが、皆さんは絶対に大丈夫ですし、将来再会した時にはきっとこう言ってくれるでしょう。『先生、私達、大丈夫でした』と。」

予測不能なVUCAの世界だし、昨夜のNHKスペシャルで放送されていたように南海トラフによる巨大地震が来る確率も高いでしょう。経済的にも政情的にも、不安な要素を数え上げたらきりがない。でも、まだ起こってないことを指折り数えて不安を抱えて毎日を過ごすより、明るい未来を想像しながら毎日をポジティブに明るく生きる方が何百倍も良いに決まっています。実際、心配事の9割は起こらないという最新研究もあります。なんとかなるよ、きっと大丈夫。

理系女子の長女はこの春から、志望どおり建築学部生になります。
子供の頃から「劇的ビフォー・アフター」が好きだった少女が、一級建築士という目標に向かって一歩を踏み出すことができるのは親としては嬉しい限りです。なりたい職業が明確で、そのための学部、進学先を決めて進む。建築学生はアルバイトもできないくらい学業が忙しいというネットの情報を見て「私、バイトできないかもなあ・・・苦笑」と覚悟を決めているようですが、それもよし。卒業して社会に出てからが勝負ですからね。

長い人生、視座高くいろんなことにチャレンジして行って欲しいなと思います。絶対に大丈夫。

春の六甲縦走キャノンボールレースが近づいてきました。

一週間前に縦走路41kmを走ったばかりですが、この週末も縦走路27kmを走破しました。そして昨日はゴルフ。ロングランの後にゴルフをすると百発百中で腰痛を発症します。笑
今週は身体メンテナンスウィークかな。

それでは、今週も一週間がんばりましょう!

地域、循環、先人の知恵

週報になりつつあるこのブログですが、まあ、本当に様々なプロジェクトが走っていて、目が回りつつも楽しい毎日です。梅の花も咲き始め、徐々に春が近づいて来ていることもあり心身ともに元気。このコンディションがずっと続くといいんだけど。

さて、仕事以外の最近のコミュニティ活動について幾つか紹介したいと思います。

まずは、健康通貨が地域活動の活性化に繋がるかを検証する産学官連携のプロジェクト。
王子公園で行われたキックオフミーティングに参加させていただきました。指輪型のバイタルデータのセンシングデバイス、OuraRingを着用することで取得された日々の活動データがコインに変換され、地域のお店で使用できたり、地域活動にドネーションできる「健康×地域活性化」の実証実験です。

この仕組み、良くできてます!健康的な生活を送るだけでコインが貯まり、学生起業家やベンチャー、NPO活動の支援に充てることができる。地域通貨ですから、その地域のお店でコインが使える。サーキュラーエコノミーのひとつのあり方かな。神戸市灘区、水道筋界隈は今、様々な先進的取り組みが行われている激アツスポットです。僕もモニター・支援者として協力させていただいています。こういう活動がもっと広がるといいな。

お次は味噌作り体験。

「健康きれい会」主催の味噌作り体験に参加させていただきました!明石海峡をのぞむセトレ舞子で、美しいマダムたちに囲まれながら味噌を作るという贅沢なシチュエーションです。

麹を触るのは初めてでした。ちょっと食べてみると・・・甘い!

麹に塩を混ぜ、こねていきます。
ある程度こねたあとは、大豆を混ぜて、またこねこね!結構重労働ですね、味噌作り。

樽にいれて、発酵させます。
最短でGW明け以降に食べれるということで(もっと長く発酵させてもよし)、今から楽しみです。

それにしても、麹や発酵を発見した先人の偉大さよ。「菌と共に人間はある」という言葉に感銘を受けながら、改めて発酵食品の良さに気づいた会でした。

最近、個人的にこういったコミュニティ活動に積極的に参加しています。いやむしろかなりの力を入れています。しかも地域密着の。

一ヶ月30日あるとして、10日はビジネス、10日は社会課題解決(社外活動、ボランティア)、10日は休暇・趣味としていますが、実はこのトライアングルがやはりかなり効果的。こういう活動で出会う人たちや、取り組みの内容から、ビジネスのヒントが得られることが本当に多いのです。

一つのことに集中し、答えを探すことももちろん大切なのですが、一見遠回りと思えることに一生懸命時間を費やし楽しむことで、異なる要素が結びつき、良いアイデアが生まれたり、ビジネスの種を見つけたり、ボトルネックになっている問題の解決策のヒントが得られたり、新たな人との出会いがある。それゆえ、最近になって「効率的、直線的、最短距離」という言葉の浅はかさと無意味さに気付きはじめて来ました。

着想から結果ってリニアに繋がらないよな。
直線的に繋がることはなく、紆余曲折と混沌の中から新しい物が生まれる。コミュニティ活動も決してリニアにゴールにたどり着いたり、答えが出るものではないけれど、それは混沌とした時代だからこそ、必要な場なのですよね。

その会社でしか通用しない人間にならないために

30歳前後の方から今後のキャリアについて相談されることが多いのですが、今の若手はしっかりしていますね。やりがいだけでなく、お金の面でもしっかりした考えを持っていてさすがだな、と思います。

巷では「受け身」と称されることが多い若者世代ですが、僕の印象はまったく違って、会社に頼るのではなくキャリアオーナーシップを持っている人が多い。自分の親世代の苦労を見ていたり、日本の凋落を目の当たりにして育っているので、良い意味で堅実、悪い意味で保守的って感じ。最初から会社に頼って生きていく、この会社に入れば安心、という考え方が薄いんですよね。そういう意味ではしっかりした人たちが多いんですが、一方、知識だけが多くて頭でっかちになっている人も中にはいます。話を聞いていて、今のままではその会社でしか通用しないなと思う人もいます。

今の時代「その会社でしか通用しない」というのはとても危険です。

勤め先がいつまであるか分からないし、財布をいくつも持っておかないと生活できない世の中になっていますよね。データを見るとすぐに分かるとおり、長く働き続けたらその分退職金が増えるということもなくなりましたし(退職金平均額、20年で1,000万減少 退職金が減り続ける理由とは?)、そもそも中小企業では退職金制度がない会社も山のようにあります。ですので「自分で稼ぐ力」と「いつどこに行っても通用する」ポータブルスキルを身につけておいた方がいい。

そのために、相談者の方に勧めているのが「抽象化能力」の向上です。
抽象化能力については、下記の過去記事に詳しく書いています。

「本質を見極めることと、抽象化能力の関係について(2021年3月23日)」
「世界を広げるというのは人脈を広げるのではなく、関心の対象を広げるということ(2021年10月10日)」

結構若い人に多いのが、すぐに答えを見つけようとする傾向と、情報を持ちすぎて知識が多いため手段が目的になっているケースです。

最近相談された事例です。
あるプロジェクトの進捗が遅れているから人を増やしたいという相談。中小企業はただでさえ採用難、人材不足なのでこういう課題はいくらでもあります。また最近では人材流出の問題もあります。今いる数少ない社員をつなぎとめておくことすら難しいのです。こう考えると、人を増やすことってめちゃくちゃ難しいですよね。それに、他に似たようなことをしている会社がたくさんあるのであれば、よほどの高待遇でないと人は来てくれません。

でもその人の見ている景色は「人を増やすこと」だけなんです。
よくよく掘り下げて状況を聞いてみると、サービス残業当たり前、製品はローンチせず赤字垂れ流しという状態らしい。このような状態なら、採用をするのではなく、まず今がんばっている社員たちに残業代を払い、インセンティブをつけることが先決。その上で、赤字事業を黒字に持っていくためにどうすれば良いかを経営層が考え、必要があればピボットの判断を下すこと。「現場に人が足りない、製品リリースが遅れている」=「じゃあ、人増やすか」は、あまりにも稚拙な判断です。このケースの場合は採用手法以前の問題で、その手前でやるべきことがたくさんある。でも、相談者の方は、どうすれば採用できるか、採用手法はこんなのがあるがどう思うかというわけです。まさに木を見て森を見ずなんですよね。物事の本質を見極めるためには、抽象化能力が必要です。

話が逸れましたが、「どこに行っても通用するビジネススキル」を身につけるには、上記に加え、社外の越境プロジェクトに参加し、全然知らない人たちとゼロイチでプロジェクトを起こすことが一番だと考えます。社内では多少ミスしたりしても周りは自分のことを知っている人ばかりなので許してもらえる。でも、安全圏で仕事をしていると、それこそ社外で通用しない人間になってしまいますからね。自分のことを全然知らない人ばかりのところで力を試してみる。外に出ましょう。

というわけで話が分散してしまいましたが、今週もがんばってまいりましょう!

より良く生きていくためには。個人として会社として。

今年に入ってからジェットコースターのように日々が過ぎ、いつの間にやら2月に入っていました。この1月から3月に掛けて、関わっている各業界団体の大きなイベントが続きますので、一部バックデートしますがご紹介しておきたいと思います。

まず、理事を努めている一般社団法人グローバル人事塾の10周年記念イベントを1月18日に東京の日本橋で開催いたしました。このような状況下にも関わらず、当日はHR業界のトップリーダーから各企業の人事担当者様など300名近い方にお集まりいただき、お祝いの言葉を頂戴いたしました。もう何年ぶりだろうというくらいリアルな場での熱気を感じながら、この10年を皆さまと振り返ることができました。

昨今、労働人口不足や少子化、働き方改革など、企業としては労働力確保と新時代に向けての組織改革、個人としては長引く不況下と低成長社会の中での生活設計戦略など、「働くこと」に対する課題が浮き彫りになっています。グローバル人事塾では、「人事のチカラで世界を変える!」をキーワードに活動を行ってきましたが、まさに今こそ広義の意味での「人事のチカラ」が求められていると思います。業界のリーダーの皆様からも激励のお言葉を多数頂戴いたしました。これからも企業横断的にフラットに集まることができるこの場をずっと続けていきたいと思います。運営の皆様、ご参加いただきました皆様、本当にありがとうございました。

さて、東京の周年イベントには参加出来なかった皆様のために、大阪でも開催いたします。日時は2/21(火)、場所は十三のプラザオーサカです。イベントページはこちらから。皆様のお申し込みをお待ちしています。

さて、話は変わりまして。

国連のグローバル・アジェンダの中で、ポストSDGsとして提唱されているのがウェルビーイングです。人生100年時代を4つの時代(春夏秋冬)に分ける考え方が中国にはあり、50〜75歳までを「白秋世代」と呼んでいます。まさにこの白秋世代が日本において人口の40%近くを占めるまでになっています。ところが今の日本では、会社の仕組みとして55歳役職定年、60歳定年退職というシステムになっており、50を超えるとやりがいを感じなくなってしまう人が多いのも事実。そこで、この白秋世代に対して企業はどう向き合うべきなのか、そして、個人としてシニア世代をどう幸せに生きていくか(=ウェルビーイング)を考える必要があります。

このテーマについて企業コンソーシアム的に研究していきましょうというのが「白秋共同研究所(所長:予防医学者 石川善樹先生)」です。2020年の創設時、神戸の有力企業を中心に35社が集まり、現在、任意団体として活動していますが、この春以降、公益性と社会性をもたせ関係企業や団体を更に増やして本格的にドライブしていくために一般社団法人化することになりました。

3月7日にANCHOR KOBE(アンカー神戸)で社団法人化に向けてのキックオフセミナーを神戸商工会議所さんと共催します。協力団体として(一社)人と組織の活性化研究会(神戸大学APO研)、そして、グローバル人事塾も名を連ねております。基調講演は「問い続ける力」や「むかしむかし あるところにウェルビーイングがありました」で著名な予防医学者の石川善樹先生を東京からお迎えして行います。パネルディスカッションもありますよ。

参加費無料、どなたでも参加できます。後半で私から社団法人の目的と活動についてプレゼンさせていただきます。神戸の美しい夜景を見ながら、皆様とディスカッションできれば幸いです。ぜひ、ご参加ください。

イベントページ、お申込みはこちらから(peatix)

人への投資と成長する企業の関係について

24新卒採用向けと思われる企業のブランディング広告がちらほら流れる時期になってきました。少なくとも新卒一括採用は未だ主流なので、新卒の方向けに「こんな会社だけはやめておけ」という内容を書いておきたいと思います。学生はこのブログは読んでいないと思いますが、この内容は転職したい社会人にも当てはまると思います。

よく大企業と中小企業という分け方がされますが、もし選択できるとすれば大企業への入社をまずはおすすめします。大企業の良さというのは、やはり財務的体力があること。そして、(一部の企業を除いて)経営トップに権限が集中しないことが挙げられます。

まず、財務的体力について。

お金がある=新しいことへの投資ができるという点が大きなメリットです。その投資の中でも一番重要なのは「人への投資」です。たとえば、社員研修。社員の能力向上にどれだけお金を掛けることができるか。企業目線では組織開発という言葉がよく使われます。また資格取得や外部の教育機関でのリカレントに社費で通わせてくれるなど、人への投資を積極的に行っている会社は、新しい事業を始める時やピボットする時でもすぐに動ける人的リソースが準備できているので、停滞することがありません。要するに将来を見据えた準備を常にできることが大きな強みです。

二番目に、経営トップに権限が集中しないことについて。
中小企業で多いのは、経営者が人への投資を渋るケースです。典型的な中小企業の特徴は、目先の儲けを最優先すること。つまり「今すぐ儲からないことには投資しない」んですね。ですので、研修、教育と聞いた時に「それやって儲かるの?」という反応になります。また、中小企業はオーナー社長の公私の財布が実質同じになっていることが多く、すぐにリターンを生まないことに投資することは、「自分の財布が痛む」と勘違いしてしまい、二の足を踏むか、決定を先送りしてしまいます。結果的に、従業員の能力は向上せず、能力が高い人間も取ることができないので、停滞→衰退に向かってしまいます。ですので、こういう会社に入ってしまうと、スキルアップが軽視されてしまうのと、個人としても会社としても成長を見込めません。

また、外部のコンサルを入れての組織開発を渋る経営者もいますが、これは上記の「すぐのリターンが見えない」に加えて、「自分の悪口を言われるのではないか」という不安と恐れがあるからです。1 on 1 で社員面談を行う際、そこに自分が入っていないことが不安なんですね。でも、直上の上司や経営陣を前にして本音が言える社員は、ほとんどいませんよね。それに、人への投資をしてもいつかは辞めるんだろ、という態度を示す経営者もたくさんいます。一方、大企業は経営トップに権限が集中しないので(もちろん大企業でも権限が集中するところはありますが・・・)、組織をシステマチックに回すことができます。

便宜上、大企業、中小企業という分け方をしてしまいましたが、もちろん、大企業でも人への投資を軽んじる会社もありますし、中小零細でも素晴らしい会社はいくらでもあります。どちらにしても「浮かぶも沈むも経営者次第」です。まとめとして、一言でいうと人への投資について「それやって儲かるの?」と渋る経営者は、人をコストとしか見ていないのでおすすめしません。人への投資を軽んじている会社に将来はなく、経営者トップに権限が集中している会社は、経営者の器以上には大きくなりません。まあ、外から見てるだけではなかなか分からないことも多いので、中の人に実情を聞くなどして、リアルな情報収集に努めてください。

自分の将来を見据えた上で、会社選びをすることは本当に重要です。
それでは、学生の皆さん良い就活を!!

ChatGPTを使ってみました

最近のテック界隈での話題は、もっぱらOpenAIの「ChatGPT」に関するものでしょう。以前から噂されていましたが、実際に無料で使えるものがリリースされると、そのすごさに驚いてしまいます。

ChatGPTは、対話型のAIチャットボットなのですが、どんな質問をしてもAIが答えてくれるのが、検索対象を限定した既存のエンタープライズサーチや、サポートチャットのように想定した問いに対して予め答えを用意しておき、データベースから取り出してくるようなタイプのものではないという点が圧倒的に違います。UIは日本語対応していませんが、日本語で質問しても日本語で答えてくれます。自然言語解析+AIですから、質問の数が増えれば増えるほど精度は増し、賢くなっていくという訳です。

試しに「ハイキングに持っていった方が良いアイテムを教えてください」と入力してみました。

結果、一部日本語がおかしいところはありますが、(それなりに)ちゃんと答えを数秒で返してくれます。

次に、少しタイプの違う質問をしてみました。

「インフレ予想が実際のインフレ率の決定に果たす役割とインフレ率の安定化政策に果たす役割について説明してください」

すると、これも(それなりに、なんとなく)返してくれます。
こうなってくると一部で話題になっているように、学生が論文をChatGPTを使って書くのではないか、ChatGPTを使って書いた論文はそれを証明できる術がないのでは、ということも、将来的には実際に起こり得るかもしれませんね。

ChatGPTはどんな質問にも答えてくれる魔法のマシンということもできますし、これをハードに搭載すれば、C-3POのようなロボットも出現するでしょう。でもこれって決して人間の能力を拡張するものでないよな、というのが僕の感想です。人が脳を使ってその思考力を高めていく、そして知識を増やしていくためにはとにかく調べ、考え、まとめ、書き、口頭で説明することが求められると思っています。一つの論文を書くのに、参考文献を何十冊も読み、引用することって、とても時間が掛かることはではありますし、文献調査の段階で目当てのものが見つからないこともあり、とても非効率な作業ですが、非効率性こそが能力の向上に役立つと思うからです。

確かに検索窓にテキストを入力するだけで欲しい情報が手に入るかもしれませんが、アナログな方法で本を漁る方が人間の能力拡張に寄与するし、僕はそっちの方が好きだな〜と考えていると、こんなニュースも飛び込んで来ました。

「アメリカでリアル書店が復活の兆し」

米最大の書店チェーンである「バーンズ・アンド・ノーブル」は、2023年に30店舗を新たにオープンする計画があるという。2008年のピーク時には、全米で726店舗を有していた同社は、読書離れが原因で規模の縮小を余儀なくされ、現在は600店にまで減少した。しかし、新型コロナウイルスの流行における読書ブームの再燃やパンデミック下における収益改善の影響で、店舗数拡大へと舵を切ったようだ。

アメリカで「リアル書店が復活の兆し・・・」 tabilabo


やっぱりな〜。
そうなんですよ。リアルな本ってすごく良いんです。僕もさらっと読むくらいならKindleも使いますが、基本的にはリアルな本を読むタイプです。図書館好きで良く通っているのですが、ペーパーレスとかインターネットとか言われても、図書館はいつも人でいっぱいです。

話を戻すと、ChatGPTの出現で戦々恐々としているのはGoogleなどの検索エンジンでしょうね。検索する必要がなくなるわけですから。さらに、ChatGPTの対抗馬も次々と生まれてくるでしょう。ChatAI自身が人間のように考え、AI独自の答えを出してくることもあるでしょう。可能性は無限大。でも、情報の取得の仕方は人それぞれですし、リアル書店が復活しているように、好みで使い分ける、ということになるのではないでしょうか。