【Vol.4】決定は直感か熟慮か。時間の投資先を正確に見極めることが、機会損失を防ぐ

何かを決断する時、最初の直感と、熟慮に熟慮を重ねたのとでは、決定の内容は90%同じだといわれている。つまり、直感と熟慮でほとんど差がない。それは物事を決定する時もそうだし、人の印象も同じだ。つまり、パッと見の直観で感じた印象と、何度か話した結果とで、相手の印象はほとんど変わらない。直感ってすごいですよね。

物事の決定に話を戻すと、会議を複数回重ねたあとに「結局、最初の案に戻ったよね」ということは多いのではないだろうか。誰にでも経験があることだと思う。最初からその決定どおりに進んでいたら時間も短縮できたのに・・・と後悔しても、過ぎた時間を元に戻すことはできない。

■費やす時間のほとんどは「すり合わせ」

最終決定までになぜそれだけの時間が掛かるのかというと、それは「すり合わせ」のためである。

すり合わせに時間が掛かってしまう、あるいはすり合わせが必要な理由として以下を挙げることができるだろう。

・メンバー全員の意向が一致しなければ、チームの士気が下がる

・決定後に誰かの意見によって仕様が変わると困る

・みんなで決めたことであれば、何か問題が発生しても一人が責任を取らなくて済む(あの時、みんなで決めたよね!という魔法の言葉が使える)


これらの要因さえ解決すれば、直感的な決定(もちろんそれは感覚的なものではなく、しっかりとした経験とエビデンスに基づくものであるべきだが)、スピーディな決定と実行に勝るものはない。形式的なすり合わせや承認フローなどは、百害あって一利なし、なのである。もし割愛、省略できるのであれば、それに越したことはない。

ただし、この場合は決定の権限を持つ人が優秀であるべき、という前提がある。

その人の決定なら、前に進もうが後ろに進もうが構わないというチームの信頼を得ているかどうか。その決定が、説得力があり、納得できるものであるか。決定者の経験値と自己研鑽は必須項目である。衆愚政治ではないが、知識と経験の少ないメンバーがいくら寄ってたかって議論しても、良いものは生まれない。過去10年に渡りヒット商品を生み出せないチームが、翌年には大ヒットを生むという確率は絶望的に低い。

■意思決定は属人化して構わない

もし仮にそういう有能な人がいるとして、そんな属人的な組織で良いのか?と問う人もいるだろう。はい、それでいいのです。大企業のトップを見ると分かることだが、孫さん、三木谷さんがいつまでもトップで居続けるのは(本人が辞めて悠々自適な生活を送りたいと願っても)、代わりがいないからなのである。会社の規模は関係なく、この「意思決定」を迅速かつ正確にできる人は少ない。これは一種の特殊能力のようなものだ。この能力を持つリーダーがいる組織はスケールし、そうでない組織はその逆である。

ちなみに、その意識決定の役割を必ずしもトップが担う必要はない。それが出来る別の人間に決済権を与えればそれでいい。僕が知っている経営者の中にも、ああでもない、こうでもない、とじっくり時間を使って考えつつ、物事を先送りしがちなウェットタイプの人もいる。だが、もし「即決 or じっくり」で結果に大差がないのであれば、それは明らかに時間の無駄だ。機会損失ほどビジネスの世界でマイナスなものはない。一度決めたらそのまま先に進む。もし結果が出なければ迅速にピボットする。それくらいの覚悟で進めるのが一番の近道だと思う。

■決定された物事の中身を練ることに時間を投資する

ちなみに、なんでもかんでもスピードが正義だと言っているわけではない。意思決定は迅速に、時間を掛けるべきは、決定された物事の中身を練ることのために。

どんなことでも最初は荒削り。でも、練って、叩いて、精錬していけば、それは強く、美しくなる。ビジネスの世界では、それは売れる。

決定は迅速に、中身はしっかり練り上げる。
時間の使い方にも強弱が必要なのである。


【参考】
プロジェクトを進める上で「システムデザイン」「システムズエンジニアリング」という手法を用いると、出戻りの発生を防ぎ、QCの最適化を行うことができるので、興味がある方は調べてみてください。