オリンピック招致のラストプレゼンテーションに学ぶ


2,020年の東京オリンピック・パラリンピック招致おめでとうございます。関係者の皆様、本当にお疲れ様でした。今回の模様を見ていると、オリンピック招致にはスポーツ界、財界、政界、自治体だけでなく(招致委員会の一覧を見ればその規模感と錚々たるメンバーに驚き)、国民全体での招致活動、という規模の大きさを新ためて実感しました。最後には「日本そのもの」である皇室の力まで借りての「オールジャパン」ぶりでしたね。

さて昨夜の23時から、Candidate Cityのラストプレゼンテーションをドキドキしながら観ていました。日本人ですから、もちろん東京に決まってほしいという思いはあるものの、観点は「どのようなプレゼンテーションが一番オーディエンスの心に刺さるか」という点。国際社会で日本人がどうプレゼンをすれば良いのか。何よりもその点に注目しました。このようなオリンピック招致の場面は最高のケース・スタディです。

そういった面では、日本人のスピーカーの皆さんは、総理から選手に至るまで全員が英語かフランス語のどちらかで、日本語を全く使わずにプレゼンをされていたので(英語が苦手な方もいらっしゃるでしょうから、影でどれだけ練習されていたかは想像に難くありません)本当に好印象だったと思います。

しかも、身振り手振りを多用して熱意を伝えることを相当練習されていたようです。英語が苦手な人は、「暗記していたことを話すのに精一杯」になってしまって、棒読みになったり、抑揚がなくなってしまったりするものです。ついつい、身振り手振りを忘れてしまう。しかし、熱意、感情に訴えるためには、手振りは絶対的に必要な要素です。フェンシング太田君、パラリン陸上の佐藤さんはすごく良かったと思います。あまり話題にはなっていませんが水野副会長の表情豊かなプレゼンや委員席に手を振りながらの入退場も、すごく印象的だったと思います。

しかしその中でも別格だったのは、高円宮妃久子殿下でしょう。Opening Remarksとして登場された瞬間、場の空気が凛とする程の品格とカリスマ、オーラ。流暢なフランス語と英語、そしてリラックスした雰囲気、アイコンタクト、笑顔。ああ、これぞ本物のセレブリティ。もうその辺の有名人や金持ちなどとは(当たり前ですが)格が全然違う。「品格」「ノーブル」という言葉はこういう時に使うんだ、と思いました。やっぱりこの辺りの方々は別格ですし、皇室の存在が国際社会での日本の立場を下支えしているという点を再認識させられました。

IOCの発祥はもちろんヨーロッパですから、貴族文化が根強く残っています。各国のIOC委員も王族や貴族、国を代表するセレブが多い。そのような文化ですから、世界の王室でも最も歴史が長い日本の皇室の一員である高円宮妃が出てくると、当然、空気が引き締まる訳ですよ(国際会議に出たことがないので、100%推測でしかありません 笑)。「Her Imperial Highness The Princess Takamado」ですからね。そしてその地位に違わぬ才女ぶり。日本の印象をグッと良くし、品格を持たせ、その後のプレゼンターに上手にバトンタッチをされたのだと思います。また、滝川クリステルもさすがのフランス語プレゼン。この二人の抜群の語学力とスピーチ力、オーラが確実に安心感を生んだ気がします。

高円宮妃久子さま IOC総会で復興支援に感謝の言葉

もちろん、安倍首相や竹田会長も素晴らしかったのですが、ロビー活動でも身振りやハグを多用するなど、相手の文化に合わせて効果的な手法を選択した好例と言えるのかもしれませんね。いや、勉強になりました。明け方5時20分のこの感動的な瞬間を、しかと写真に刻んでおきました。