逆風に向かって走る時に思い出す一文がある


時折吹く突風にバランスを崩しながら、海沿いを走る。

雨が降れば引き返そうと思って、家を出た。出来るだけ走れるうちに距離を稼いでおきたいのが本音だ。少々の風くらいなら、走る分には問題ない。

もうすぐ大阪や神戸マラソンといった大きな大会が近づいているからなのか、こんな天候でもランナーは結構いる。明らかにタイムを狙っているランナーもいれば、完走目的のランナーも。長いこと走っていると、ペースや表情でこの人がどのレベルのランナーなのか大体分かるようになってくる。


少し気分を変えてみようと、いつも履いている「lunar glide」ではなく、ハーフマラソンなどのレース用にストックしている軽量の「ZOOM SPEED RIVAL +」で走ってみた。ソールが厚くてクッション性の高い lunar glide とは違い、ソールが薄くて軽い分、しっかり地面を捉えて走れている感じがして気持ち良い。でも、クッションが薄いと膝や脚の痛みが出るのが怖いので、また普段の練習は、lunar glide にしようと思う。併用が一番いいかな。


とにかく今日は風が強くて、海洋体育館に係留してあるヨットのマストに風が当たってヒューヒューと音を立てている。イヤフォンをしながら走っていても、風の音がうるさくて、サラ・ボーンの歌声も、1km毎にラップタイムをアナウンスしてくれる「Run Keeper」の女性の機械音も聞こえないくらい。

逆風の中を走るというのは本当にキツい。

走っても走っても全然進んでいる感じがしない。ティーグラウンドで超アゲインストの時に会心のティーショットを放ったつもりでも、全然距離が出ない時に良く似ている。ちょっと歩いて休憩しようかなと思うけれど、そんな時に思い出すのが、村上春樹の「走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)」で彼が書いていた、

「マラソンは走るスポーツである。もし僕の墓碑銘なんてものがあるとしたら、[少なくとも最後まで歩かなかった]と刻んでもらいたい」

との一文だ。

僕は普段走っている時も、マラソン大会の時も、歩くし休む。ただ、かっこ悪くてもいいから3時間台でゴールを目指すだけの市民ランナーだ。でも、彼のフレーズは常に僕の頭の中にあって、ヘコタレそうな時に背中を押してくれる一言になっている。今日も台風が近づく逆風の中でそのフレーズを思い出していた。

今、外はすごい雨。
今日は家でゆっくり過ごすのが正しい選択の模様。