相手の関心を惹きつける間違った方法

今週は一週間東京にいたのですが、夜風に少しづつ秋の気配を感じるようになってきました。日中はまだまだ暑いですが、季節は一歩づつ進んでいるようです。

さて、様々な情報に接する中で、報道されるニュースの裏側には何があるのか、自分が日常的に使っているプラットフォームの裏側には何があるのか、ということをふと考えることがあります。知らずしらずのうちに影響を受けているのではないか、価値観や考え方が、何らかの外的要因によって無意識のうちに意図しない方向に形成されているのではないか。

自分が普段、考えや感情をニュートラルに保つために、インターネットから離れて自然の中に身を置き、図書館に入り浸っているのは、何らかの影響を受けないように自分を守るためなのかもしれません。

よく、人の関心を惹きつける手っ取り早い方法として、相手を怒らせることがあげられます。相手が怒ることをすれば、あるいは、怒るような情報を提供すれば、相手の関心を引き付けることができるというわけです。それを裏付ける証拠として、2021年に全世界を揺るがせたFacebook FileによるFBのアルゴリズムの告発があります。この内容はまさに、大衆の感情を企業が利用しているということが明らかになった一例でした。

FBの元社員、フランシス・ホーゲンによる告発によると、2018年にアルゴリズムの変更がなされた際、人々の怒りを誘発するコンテンツを優先的にニュースフィードに表示させるように設計したということでした。なぜそういうアルゴリズムを組んだかというと、人々の怒りの感情を引き出せば、関心の矛先はそちらに向くし、結果としてFacebook上での滞在時間は伸びる(=FBの利益になる)からです。(ちなみに今はそのようなアルゴリズムは組まれていないと思いますが)

ユーザーの怒りを誘発することは、メディアの世界では「アウトレージ・インダストリー」とも呼ばれるし、日本では炎上商法と呼ばれることもあります。人々を怒らせることが利益になるという一例ですね。Facebookだけでなく、X (旧 Twitter)の在り方に対して、イーロン・マスクがXはユーザー間で荒れること(ヘイトスピーチ)を肯定・容認していることとも関係があるかもしれません。

さよならTwitter【前編】突然の利用制限、ブランド変更にマスク氏の「迷惑体質」
(The Asahi Shimbun Globe+)

そもそもビッグテックは、ユーザーの一人ひとりのことなんて考えてないので、ユーザーが離れても構わないし、人間をモノとしか思っていないので、企業の利益のために群集心理を巧みに利用するのですよね。

じゃあ、自分たちがそれらの影響を受けないようにするにはどうすれば良いか。
SNSは社会のインフラとなっているので、全く触れないようにするのは難しいですが、やはり与えられる情報を鵜呑みにするのではなく、様々な観点から比較分析し、自分の中でのフィルターを通して解釈することが大切なのではないかと思います。

それは人間関係でも同じで「怒れる人」から離れることも重要かもしれません。対話を避けるのではなく、自分のリソースを相手のために無駄に浪費しないようにバランス良く付き合うということが大切です。

とはいえ、都合の良い情報ばかり、好きな情報ばかりに触れることは多事争論を生まないし、それはそれで価値観や考え方にバイアスが掛かってしまうので、異なる意見にも耳を傾けつつ、自分の情報収集能力、フィルターの精度、価値観の形成について、自分で責任を持つということが大切なのでしょうね。