答えを探すのではなく、問いを立てること

先月エントリーしたブログで、効率的、直線的、最短距離という言葉に何の魅力も感じないと書きました。その理由として、「一つのことに集中し、答えを探すことももちろん大切なのですが、一見遠回りと思えることに一生懸命時間を費やし楽しむことで、異なる要素が結びつき、良いアイデアが生まれたり、ビジネスの種を見つけたり、ボトルネックになっている問題の解決策のヒントが得られたり、新たな人との出会いがある」としたのですが、それに加えてもう一つ気付いたことがあります。

ChatGPTのようなgenerative AIが台頭してくると、答えを得ることはとても簡単になります。あれこれ考えたり、論文を漁ったり、調べたりしなくても、先行研究や論文データベースはすでに検索対象としてあるし、実際に起こった事実を考察して結論を出し、AIがそこから答えを自動的に生成してくれます。答えを得る作業に費やす時間は、ほぼ0になりつつある。つまり答えを探すという行為そのものは既に最短距離で実現できてしまうものだと思うのです。(ちなみに効率化に関しては、これを本気で実現すると働き手は不要になるので一部の資本家だけが儲かるというディストピアが生まれるだけです)

でも、問いを立てる、ということについてはどうだろう。

自分でなにかに関心を持ち、これは本当なのだろうか、他にもっと良い方法はないのだろうか、この課題を解決するにはどういうアプローチをすれば良いのだろうか。問いを立てる能力がこれからもっと必要になっていくのではないでしょうかね。前回の記事で、福沢先生や谷崎の本を読んでいると書きましたが、現代から見ると情報もモノも何もない明治維新前後や昭和初期の時代、彼らは常に「問い」を立てていることが分かります。その時代、自分で考え、選択肢を準備し、決定して行動しなければ何も起こらないし何も始まらないからです。

白秋共同研究所で研究と実践のテーマにしている「ウェルビーイング」は、まさにこの点を指摘しているのかもしれません。僕は専門家ではないので教えてもらったことだけを紹介すると、ウェルビーイングの構造は、まず「経済成長」「民主化」「社会的寛容」という社会的条件があり、その上で「働く/生きる上で選択肢から自己決定する」→「主観的な評価と体験」がウェルビーイングな状態である、ということです。

つまり重要なのは、自ら考え、自己決定をするということ。
そのためには答えをすぐに探そうとしたり、答えを見て判断するのではなく、問いを立てることが必要だということですね。これ、習慣化したいと考えています。

目指すは珍味

我が家は父方も母方も祖母が健在でして。
ふたりとも95歳前後なのに、特に病気をすることも、認知症もなく、本当に健康に暮らしています。おばあちゃんたちを見ていて長寿と健康の秘訣について思うことは、「土に触れること、良く食べること、良く寝ること」この3つだと思っています。あとは、友達がどれだけたくさんいるか。技術やITやエコノミクスとかはどうでも良くて、ただ毎日を生きる。たっぷり寝て、ご飯つくって、働いて、食べて、寝る。なにかのタイミングで生活がドラスティックに変わったり、科学技術の革新によって考え方が変わったわけでもない。戦前から戦中、戦後の混乱期、高度経済成長期、バブル、失われた30年・・・それぞれの時代の中で、なるように生きてきた。

僕はそれだけですごいことだよな、と感心すると共に、人間の本質って基本的に変わらないとも思うのです。

最近、福沢諭吉先生の自伝を読み返しているのですが、150年前でもその当時と昔を比べておられますし、文豪・谷崎の戦前の随筆の中でも、いまどきの若い子は言葉使いが変わってきた、とか、服装が変わってきた、とか書かれているんですよね。つまり、いつの時代も同じということなんでしょう。

今週も様々なニュースが飛び込んできました。SVBやCSなどの銀行破綻による金融不安、米国IT企業の大規模リストラ。その間にもGPT-4やBardなどのレビューも相変わらず絡みあって、これからの時代はどうのこうのという論調が目立つんですけど、はっきり言って「そんなもん」でしょう。良い悪いをただただ繰り返すのが人間の歴史です。

ここ30年という短い間だけでも、ドットコムバブルの崩壊、リーマンショック、コロナショックがあり、なにかある事に大規模リストラが行われ、景気が良くなると大規模雇用が行われてきました。今はインフレ抑制のための金利上昇による株安とリセッションを見越してのリストラなわけで、一通り落ち着いたら、また雇用が促進される。一喜一憂したり、起きている事象を分析して論評したりするのではなく、自分の生活を自分なりに、コツコツと積み上げていくことが大切なのだろうと思います。

そうそう。
先日、産学官民連携団体KNSの定例会が関大梅田キャンパスで行われたのですが、僕も含めて多くの方が社会課題解決のために「ローカル」と「共助」と「人間らしさ」をテーマに活動されていることが分かりました。やっぱりそうだよね。大切なのは半径数メートルの人間関係と思いやり、そして、自分らしく意思決定しながら人生を歩むこと。儲からないことを一生懸命やるところが日本人らしくて良いなと思っています。

日本全体としていえることだと思いますが、世界のスタンダートを目指すのではなく、やはり「珍味」になることが大切だと思うんです。目線を上に上げすぎても下に下げすぎてもだめで、バランスの良さを保ちながら、ハンバーガーやピザではなく、珍味を目指す(笑)グローバルニッチというのか、土地に根ざす文化というのか。島国という土地に根ざす文化から出てくる製品やサービスが海外で受け入れられるわけないじゃんという割り切りも大事なのではないでしょうか。

いずれにしても、何が起きても動じず、そうそう、こんなもんだよね。人間の歴史って山あり 谷ありだよね、と思えるようになれたら楽ですね。うちのおばあちゃん達のように、健康長寿の秘訣はそれだと思います。

先日の中華ランチ美味しかった

血流と脳への刺激について

週末が忙しいものですから、月曜日に前週を振り返るというパターンが定着しつつあります。皆様いかがお過ごしでしょうか。

この一週間を振り返ってみると、個人的に一番のグッドニュースは、花粉症が改善に向かっているということです。3月に入ってから花粉症がひどくて喘息のような咳が止まらず、耳鼻科でもらったアレルギーの薬を飲みながら凌いでいたのですが、なかなか改善に向かいません。そんな折、MC業をしている友人から、アナウンサーなどの専門職が通っている耳鼻科があるということで診てもらったところ、そこで処方された薬がハマりまして。ようやく改善されつつあります。少し強めの薬なのかもしれませんが、人に会って話をすることが仕事ですからね。

さて、昨日は六甲縦走キャノンボール大会でした。トレラン草レースの人気大会で、道中、関東から来ました〜というトレランナーさんご一行もいましたよ。宝塚から須磨浦公園までの片道縦走46km、累積標高±2500mのコースですが、ラン友さんたちと無事完走。楽しい一日でした。さすがに今日は多少筋肉のハリがありますけれど、普段のトレーニングに加えて血流を良くすることを意識しているので、自分でも驚くほど痛みはありません。やはり普段の積み重ねが大切ですね。

血流って、たとえば冷温交代浴など、刺激を与えることで活性します。外部からの刺激ってとても大切で。これは脳も同じだと思うんですよね。適度な刺激がないと、筋肉同様、考え方も思考パターンも凝り固まってしまう。最近特に思うのは「刺激は自ら与えるもの」ということです。

独立して一年、仕事も時間もライフスタイルもすべて自分で選べるようになりました。会社勤めをしていると、日々、人間関係も含めて良いことも悪いこともあります。がっかりすることも嫌な思いをすることも。でも、フリーになると、そういうことがほとんどないんです。居心地の良い環境、人間関係、コミュニティ、仕事。すべて自分で選べるのでハッピーでしかない。ノンストレスな毎日は最高です。

でも一方で、不可抗力的に降り注ぐ「嫌な刺激」って実はとても大切なんですね。このブログでも何度か書いていますが、人を成長させるのは「理不尽な経験」と「居心地の悪さ」だと思っています。いやこれ本当に。修羅場(と言っても大げさですが)をどれだけ超えたかによって、人としての器の大きさや引き出しの多さが決まると思っていますので、苦労は買ってでもするもの、ということもできますよね。

独立して一年を振り返る時期に来ましたので、この一年がどうだったか、独立してどうだったかは追々時間を掛けて書こうと思いますが、もし課題があるとしたら、自分に「刺激」をどう与えるかという点です。そのために、来る仕事は何でもする、知らない場所に積極的に出掛ける、人がしないような仕事を自分から買って出る。朝、ジョギングや散歩中にすれ違う人とは必ず挨拶をする、こういうことを日課としてやっています。

脳の血流が凝り固まってしまわないよう、血流良くすることって大事ですね。

縦走中に出会った須磨アルプスの夕焼け

お願いする力、聞く力

起業にしても、転職にしても、「三人寄れば文殊の知恵」と言われるように、自分ひとりで悩むのではなく、いろんな人からのアドバイスを聞く方がより良い判断ができるのは明白です。

僕自身も人に相談を仰ぐこともあれば(優れた経営者の本に助けを求めることもあります)、相談されることもあります。最近いずれも20代の起業家3人のカベウチ相手になりましたが、こちらが学ぶことも多く、「相談させてください」「アドバイスをいただきたいので時間をください」と言われると、逆に「ありがとうございます」と思ってしまうくらいです。そういう意味では、最近の20代起業家は(皆がそうであるかは分かりませんが)、今の自分自身や自分のビジネスに足りないものを的確に把握し、そのピースを埋めるための情報やメンターを素早くスタッフィングするのが上手ですね。それに社外にサードプレイスを作れと言わなくても、呼吸をするように様々なコミュニティに属していろんな人とコミュニケーションをしている。自分が若い頃はそんなことできなかったよな〜と、感心の眼差しで彼らを見ています。

個人的に、仕事を成功させる上で重要な要素の中に、「お願いする力」と「聞く力」があると思っています。「お願いする力」というのは、お願いの仕方が上手いとかではなく、その人自身の人間性、人となりにあると思っています。プライドや恥ずかしさを捨てて、謙虚にお願いするのはもちろん大切なのですが、それよりも普段から思いやりを持ち、親切に人に接し、自分にできることは何でもお手伝いするといった利他の精神かつ見返りを求めないコミュニケーションで、人から愛されるようなことをしている人。そういう普段の積み重ねがあるからこそ、何かをお願いした時に「よし、君のためなら喜んで!」という気持ちなるのだと思います。

また「聞く力」についても、聞き方のテクニックよりも、事前の準備の方が重要です。相談相手の仕事やキャリアを調べ、その人からどんな情報やアドバイスを聞き出したいかを整理し準備しておく。そして、相談相手が答えやすい質問を投げる。ただなんとなく、どうすれば良いですかね〜では、相談相手もどう答えて良いか分かりません。そうして引き出したアドバイスを、ビジネスの血肉にするべく謙虚に分析することも必要です。事前の入念な準備が必要なのは、打ち合わせや会議でも同じですよね。

いずれにしても将来有望な若手起業家のお手伝いが少しでも出来るのは自分にとっても本当に嬉しいことです。もちろん、自分もまだまだ挑戦し続けるつもりではありますけれど。

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今日の一枚は、インバウンドの観光客が戻りつつある二寧坂の写真です。

大丈夫。なんとかなる。

「大丈夫」という言葉は人を勇気づけますね。3/1は長女の高校卒業式だったのですが、来賓祝辞に登壇された神戸大学の副学長の言葉が素晴らしかったので紹介しておきます。

「皆さんにひとつ言葉を送りたいと思います。それは『大丈夫』です。色々と不安に思うこともあるかもしれませんが、皆さんは絶対に大丈夫ですし、将来再会した時にはきっとこう言ってくれるでしょう。『先生、私達、大丈夫でした』と。」

予測不能なVUCAの世界だし、昨夜のNHKスペシャルで放送されていたように南海トラフによる巨大地震が来る確率も高いでしょう。経済的にも政情的にも、不安な要素を数え上げたらきりがない。でも、まだ起こってないことを指折り数えて不安を抱えて毎日を過ごすより、明るい未来を想像しながら毎日をポジティブに明るく生きる方が何百倍も良いに決まっています。実際、心配事の9割は起こらないという最新研究もあります。なんとかなるよ、きっと大丈夫。

理系女子の長女はこの春から、志望どおり建築学部生になります。
子供の頃から「劇的ビフォー・アフター」が好きだった少女が、一級建築士という目標に向かって一歩を踏み出すことができるのは親としては嬉しい限りです。なりたい職業が明確で、そのための学部、進学先を決めて進む。建築学生はアルバイトもできないくらい学業が忙しいというネットの情報を見て「私、バイトできないかもなあ・・・苦笑」と覚悟を決めているようですが、それもよし。卒業して社会に出てからが勝負ですからね。

長い人生、視座高くいろんなことにチャレンジして行って欲しいなと思います。絶対に大丈夫。

春の六甲縦走キャノンボールレースが近づいてきました。

一週間前に縦走路41kmを走ったばかりですが、この週末も縦走路27kmを走破しました。そして昨日はゴルフ。ロングランの後にゴルフをすると百発百中で腰痛を発症します。笑
今週は身体メンテナンスウィークかな。

それでは、今週も一週間がんばりましょう!

冬の終わりを山で楽しむ

たまには趣味のトレランのことも書いてみますね。

この一週間のハイライトは、大阪マラソン出走に合わせて集合した「アドベンチャークラブ」のメンバー達との飲み会でした。プロのスパルタン選手から、超長距離を走るウルトラランナーYさん(なんと今年は東京〜青森駅伝を企画されているところ)、そしていつも一緒の仲良しラン友さんたちと、ラン談義に花が咲きました。

我らがアドベンチャークラブ主宰の北田さんは、極寒のアラスカ1600kmレース(Iditarod Trail Invitational 制限時間30日間)に挑戦中。そんなすごい人の話から目先のレースの話題まで、話題は尽きることなく爆笑の連続。やっぱりラン友さんとの集まりはいいわあ〜。

僕の方は、3/19の六甲縦走キャノンボール(55km)と、5/21鯖街道ウルトラ(全鯖77km)にエントリー。とりあえず目の前に迫ったキャノンボールの練習のため、日曜日は縦走路を走ってきました。距離を稼ぐべく、東のスタート地点・宝塚までは自宅から10km走って向かいます。縦走路はいつもの塩尾寺をスタート。寒さは覚悟していましたが、想像以上に寒かった!そんな寒さが伝わる写真を幾つかアップしておきます。

山頂はほぼ吹雪。
僕のようなトレランナーはさほど厚着はしませんので、寒さが余計にこたえます。少しでも標高を下げるべく、先を急ぎました。

当初、35kmくらいを走る予定だったのですが、意外と距離も伸ばせそうだったので、そのまま市ヶ原から布引の滝を経由して三宮まで下ることにしました。

掬星台からの景色

布引の滝

ここまででトータル41km。
この時期の距離としては満足です!エナジーバーと塩飴くらいしか食べてなかったので、遅めのランチはラーメンにしました。

まあ、こんな風にサラッと書いていますけどね。縦走路はやっぱりキツいわ〜。

特に摩耶山から市ヶ原までのエンドレス下りが膝とスネに来る!縦走路はそこから更に、難所の菊水山から鵯越、馬の背へと続くので、まだまだここから先が長い。でも、このコースを難なくコンプできたら、鯖街道77kmは乗り越えられるので、山トレは続けたいと思います。

春はすぐそこ!
さあ、トレーニング、トレーニング。

地域、循環、先人の知恵

週報になりつつあるこのブログですが、まあ、本当に様々なプロジェクトが走っていて、目が回りつつも楽しい毎日です。梅の花も咲き始め、徐々に春が近づいて来ていることもあり心身ともに元気。このコンディションがずっと続くといいんだけど。

さて、仕事以外の最近のコミュニティ活動について幾つか紹介したいと思います。

まずは、健康通貨が地域活動の活性化に繋がるかを検証する産学官連携のプロジェクト。
王子公園で行われたキックオフミーティングに参加させていただきました。指輪型のバイタルデータのセンシングデバイス、OuraRingを着用することで取得された日々の活動データがコインに変換され、地域のお店で使用できたり、地域活動にドネーションできる「健康×地域活性化」の実証実験です。

この仕組み、良くできてます!健康的な生活を送るだけでコインが貯まり、学生起業家やベンチャー、NPO活動の支援に充てることができる。地域通貨ですから、その地域のお店でコインが使える。サーキュラーエコノミーのひとつのあり方かな。神戸市灘区、水道筋界隈は今、様々な先進的取り組みが行われている激アツスポットです。僕もモニター・支援者として協力させていただいています。こういう活動がもっと広がるといいな。

お次は味噌作り体験。

「健康きれい会」主催の味噌作り体験に参加させていただきました!明石海峡をのぞむセトレ舞子で、美しいマダムたちに囲まれながら味噌を作るという贅沢なシチュエーションです。

麹を触るのは初めてでした。ちょっと食べてみると・・・甘い!

麹に塩を混ぜ、こねていきます。
ある程度こねたあとは、大豆を混ぜて、またこねこね!結構重労働ですね、味噌作り。

樽にいれて、発酵させます。
最短でGW明け以降に食べれるということで(もっと長く発酵させてもよし)、今から楽しみです。

それにしても、麹や発酵を発見した先人の偉大さよ。「菌と共に人間はある」という言葉に感銘を受けながら、改めて発酵食品の良さに気づいた会でした。

最近、個人的にこういったコミュニティ活動に積極的に参加しています。いやむしろかなりの力を入れています。しかも地域密着の。

一ヶ月30日あるとして、10日はビジネス、10日は社会課題解決(社外活動、ボランティア)、10日は休暇・趣味としていますが、実はこのトライアングルがやはりかなり効果的。こういう活動で出会う人たちや、取り組みの内容から、ビジネスのヒントが得られることが本当に多いのです。

一つのことに集中し、答えを探すことももちろん大切なのですが、一見遠回りと思えることに一生懸命時間を費やし楽しむことで、異なる要素が結びつき、良いアイデアが生まれたり、ビジネスの種を見つけたり、ボトルネックになっている問題の解決策のヒントが得られたり、新たな人との出会いがある。それゆえ、最近になって「効率的、直線的、最短距離」という言葉の浅はかさと無意味さに気付きはじめて来ました。

着想から結果ってリニアに繋がらないよな。
直線的に繋がることはなく、紆余曲折と混沌の中から新しい物が生まれる。コミュニティ活動も決してリニアにゴールにたどり着いたり、答えが出るものではないけれど、それは混沌とした時代だからこそ、必要な場なのですよね。

その会社でしか通用しない人間にならないために

30歳前後の方から今後のキャリアについて相談されることが多いのですが、今の若手はしっかりしていますね。やりがいだけでなく、お金の面でもしっかりした考えを持っていてさすがだな、と思います。

巷では「受け身」と称されることが多い若者世代ですが、僕の印象はまったく違って、会社に頼るのではなくキャリアオーナーシップを持っている人が多い。自分の親世代の苦労を見ていたり、日本の凋落を目の当たりにして育っているので、良い意味で堅実、悪い意味で保守的って感じ。最初から会社に頼って生きていく、この会社に入れば安心、という考え方が薄いんですよね。そういう意味ではしっかりした人たちが多いんですが、一方、知識だけが多くて頭でっかちになっている人も中にはいます。話を聞いていて、今のままではその会社でしか通用しないなと思う人もいます。

今の時代「その会社でしか通用しない」というのはとても危険です。

勤め先がいつまであるか分からないし、財布をいくつも持っておかないと生活できない世の中になっていますよね。データを見るとすぐに分かるとおり、長く働き続けたらその分退職金が増えるということもなくなりましたし(退職金平均額、20年で1,000万減少 退職金が減り続ける理由とは?)、そもそも中小企業では退職金制度がない会社も山のようにあります。ですので「自分で稼ぐ力」と「いつどこに行っても通用する」ポータブルスキルを身につけておいた方がいい。

そのために、相談者の方に勧めているのが「抽象化能力」の向上です。
抽象化能力については、下記の過去記事に詳しく書いています。

「本質を見極めることと、抽象化能力の関係について(2021年3月23日)」
「世界を広げるというのは人脈を広げるのではなく、関心の対象を広げるということ(2021年10月10日)」

結構若い人に多いのが、すぐに答えを見つけようとする傾向と、情報を持ちすぎて知識が多いため手段が目的になっているケースです。

最近相談された事例です。
あるプロジェクトの進捗が遅れているから人を増やしたいという相談。中小企業はただでさえ採用難、人材不足なのでこういう課題はいくらでもあります。また最近では人材流出の問題もあります。今いる数少ない社員をつなぎとめておくことすら難しいのです。こう考えると、人を増やすことってめちゃくちゃ難しいですよね。それに、他に似たようなことをしている会社がたくさんあるのであれば、よほどの高待遇でないと人は来てくれません。

でもその人の見ている景色は「人を増やすこと」だけなんです。
よくよく掘り下げて状況を聞いてみると、サービス残業当たり前、製品はローンチせず赤字垂れ流しという状態らしい。このような状態なら、採用をするのではなく、まず今がんばっている社員たちに残業代を払い、インセンティブをつけることが先決。その上で、赤字事業を黒字に持っていくためにどうすれば良いかを経営層が考え、必要があればピボットの判断を下すこと。「現場に人が足りない、製品リリースが遅れている」=「じゃあ、人増やすか」は、あまりにも稚拙な判断です。このケースの場合は採用手法以前の問題で、その手前でやるべきことがたくさんある。でも、相談者の方は、どうすれば採用できるか、採用手法はこんなのがあるがどう思うかというわけです。まさに木を見て森を見ずなんですよね。物事の本質を見極めるためには、抽象化能力が必要です。

話が逸れましたが、「どこに行っても通用するビジネススキル」を身につけるには、上記に加え、社外の越境プロジェクトに参加し、全然知らない人たちとゼロイチでプロジェクトを起こすことが一番だと考えます。社内では多少ミスしたりしても周りは自分のことを知っている人ばかりなので許してもらえる。でも、安全圏で仕事をしていると、それこそ社外で通用しない人間になってしまいますからね。自分のことを全然知らない人ばかりのところで力を試してみる。外に出ましょう。

というわけで話が分散してしまいましたが、今週もがんばってまいりましょう!

より良く生きていくためには。個人として会社として。

今年に入ってからジェットコースターのように日々が過ぎ、いつの間にやら2月に入っていました。この1月から3月に掛けて、関わっている各業界団体の大きなイベントが続きますので、一部バックデートしますがご紹介しておきたいと思います。

まず、理事を努めている一般社団法人グローバル人事塾の10周年記念イベントを1月18日に東京の日本橋で開催いたしました。このような状況下にも関わらず、当日はHR業界のトップリーダーから各企業の人事担当者様など300名近い方にお集まりいただき、お祝いの言葉を頂戴いたしました。もう何年ぶりだろうというくらいリアルな場での熱気を感じながら、この10年を皆さまと振り返ることができました。

昨今、労働人口不足や少子化、働き方改革など、企業としては労働力確保と新時代に向けての組織改革、個人としては長引く不況下と低成長社会の中での生活設計戦略など、「働くこと」に対する課題が浮き彫りになっています。グローバル人事塾では、「人事のチカラで世界を変える!」をキーワードに活動を行ってきましたが、まさに今こそ広義の意味での「人事のチカラ」が求められていると思います。業界のリーダーの皆様からも激励のお言葉を多数頂戴いたしました。これからも企業横断的にフラットに集まることができるこの場をずっと続けていきたいと思います。運営の皆様、ご参加いただきました皆様、本当にありがとうございました。

さて、東京の周年イベントには参加出来なかった皆様のために、大阪でも開催いたします。日時は2/21(火)、場所は十三のプラザオーサカです。イベントページはこちらから。皆様のお申し込みをお待ちしています。

さて、話は変わりまして。

国連のグローバル・アジェンダの中で、ポストSDGsとして提唱されているのがウェルビーイングです。人生100年時代を4つの時代(春夏秋冬)に分ける考え方が中国にはあり、50〜75歳までを「白秋世代」と呼んでいます。まさにこの白秋世代が日本において人口の40%近くを占めるまでになっています。ところが今の日本では、会社の仕組みとして55歳役職定年、60歳定年退職というシステムになっており、50を超えるとやりがいを感じなくなってしまう人が多いのも事実。そこで、この白秋世代に対して企業はどう向き合うべきなのか、そして、個人としてシニア世代をどう幸せに生きていくか(=ウェルビーイング)を考える必要があります。

このテーマについて企業コンソーシアム的に研究していきましょうというのが「白秋共同研究所(所長:予防医学者 石川善樹先生)」です。2020年の創設時、神戸の有力企業を中心に35社が集まり、現在、任意団体として活動していますが、この春以降、公益性と社会性をもたせ関係企業や団体を更に増やして本格的にドライブしていくために一般社団法人化することになりました。

3月7日にANCHOR KOBE(アンカー神戸)で社団法人化に向けてのキックオフセミナーを神戸商工会議所さんと共催します。協力団体として(一社)人と組織の活性化研究会(神戸大学APO研)、そして、グローバル人事塾も名を連ねております。基調講演は「問い続ける力」や「むかしむかし あるところにウェルビーイングがありました」で著名な予防医学者の石川善樹先生を東京からお迎えして行います。パネルディスカッションもありますよ。

参加費無料、どなたでも参加できます。後半で私から社団法人の目的と活動についてプレゼンさせていただきます。神戸の美しい夜景を見ながら、皆様とディスカッションできれば幸いです。ぜひ、ご参加ください。

イベントページ、お申込みはこちらから(peatix)

人への投資と成長する企業の関係について

24新卒採用向けと思われる企業のブランディング広告がちらほら流れる時期になってきました。少なくとも新卒一括採用は未だ主流なので、新卒の方向けに「こんな会社だけはやめておけ」という内容を書いておきたいと思います。学生はこのブログは読んでいないと思いますが、この内容は転職したい社会人にも当てはまると思います。

よく大企業と中小企業という分け方がされますが、もし選択できるとすれば大企業への入社をまずはおすすめします。大企業の良さというのは、やはり財務的体力があること。そして、(一部の企業を除いて)経営トップに権限が集中しないことが挙げられます。

まず、財務的体力について。

お金がある=新しいことへの投資ができるという点が大きなメリットです。その投資の中でも一番重要なのは「人への投資」です。たとえば、社員研修。社員の能力向上にどれだけお金を掛けることができるか。企業目線では組織開発という言葉がよく使われます。また資格取得や外部の教育機関でのリカレントに社費で通わせてくれるなど、人への投資を積極的に行っている会社は、新しい事業を始める時やピボットする時でもすぐに動ける人的リソースが準備できているので、停滞することがありません。要するに将来を見据えた準備を常にできることが大きな強みです。

二番目に、経営トップに権限が集中しないことについて。
中小企業で多いのは、経営者が人への投資を渋るケースです。典型的な中小企業の特徴は、目先の儲けを最優先すること。つまり「今すぐ儲からないことには投資しない」んですね。ですので、研修、教育と聞いた時に「それやって儲かるの?」という反応になります。また、中小企業はオーナー社長の公私の財布が実質同じになっていることが多く、すぐにリターンを生まないことに投資することは、「自分の財布が痛む」と勘違いしてしまい、二の足を踏むか、決定を先送りしてしまいます。結果的に、従業員の能力は向上せず、能力が高い人間も取ることができないので、停滞→衰退に向かってしまいます。ですので、こういう会社に入ってしまうと、スキルアップが軽視されてしまうのと、個人としても会社としても成長を見込めません。

また、外部のコンサルを入れての組織開発を渋る経営者もいますが、これは上記の「すぐのリターンが見えない」に加えて、「自分の悪口を言われるのではないか」という不安と恐れがあるからです。1 on 1 で社員面談を行う際、そこに自分が入っていないことが不安なんですね。でも、直上の上司や経営陣を前にして本音が言える社員は、ほとんどいませんよね。それに、人への投資をしてもいつかは辞めるんだろ、という態度を示す経営者もたくさんいます。一方、大企業は経営トップに権限が集中しないので(もちろん大企業でも権限が集中するところはありますが・・・)、組織をシステマチックに回すことができます。

便宜上、大企業、中小企業という分け方をしてしまいましたが、もちろん、大企業でも人への投資を軽んじる会社もありますし、中小零細でも素晴らしい会社はいくらでもあります。どちらにしても「浮かぶも沈むも経営者次第」です。まとめとして、一言でいうと人への投資について「それやって儲かるの?」と渋る経営者は、人をコストとしか見ていないのでおすすめしません。人への投資を軽んじている会社に将来はなく、経営者トップに権限が集中している会社は、経営者の器以上には大きくなりません。まあ、外から見てるだけではなかなか分からないことも多いので、中の人に実情を聞くなどして、リアルな情報収集に努めてください。

自分の将来を見据えた上で、会社選びをすることは本当に重要です。
それでは、学生の皆さん良い就活を!!