修羅場の数だけ成長する

年が明けてからあっという間に時間が過ぎ、もう1月も終わろうとしています。
ブログの更新も久しぶりになってしまいました。

僕自身「3等分生活」と称して、一ヶ月をビジネス、社会貢献、休暇をそれぞれ3割づつのバランスとした生活を心掛けていますが、ビジネスサイドの勢いが強く、他を圧迫してバランスが崩れています。反省。

激務上等。こういう時こそ若い頃の経験が活きますね。
30代は徹夜出張徹夜出張と、とにかく寝ずに仕事をしている時期も多かったです。仕事が少し落ち着くと空いた時間は飲みに回るので、まあ結局寝てないわけですよね。一日3〜4時間睡眠とか当たり前。こういう経験があるから今の状況でも「ああ、これこれ!」と目を細めて過去を懐かしむくらいの余裕もあるわけです。

最近は働き方改革でワークライフバランスが重要視されており、このような激務経験をした方が良いか悪いかと聞かれると答えに窮するのですが、「何事も経験」ということを考えると、若いうちに苦労しておいて良かったなと、個人的には思います。修羅場の数だけ人は成長する。対応の引き出しも増える。

古い考えでしょうかね。でも、建築学生の娘が徹夜で課題に取り組んでいたり、高校生の娘が試験前に徹夜していたりするのを見ると、いつの時代も同じですよね。積み重ねは決して無駄ではない。僕も多少のトラブルや激務くらいなんとも思いませんもん。「結局なんとなる」ということを身を持って経験しているからなんですね。一部の天才を除いて、普通の人間が唯一できることは「努力する」「時間を掛ける」ということだけですから。

さて、ここ数週間のハイライトを。

創立150周年を迎える、西宮市立今津小学校でキャリアのお話をしました。

依頼をいただいてから、子どもたちに興味を持ってもらえる話ってどんなかな~?と考えて行きついたところは、僕自身が現地で感じ、その後のビジネスに大きな影響を受けた、シリコンバレーの「愛すべきオタク(Geek)文化」。

技術と技術、我が道を行くオタクとオタクの交差点にイノベーションが生まれる。そして、評論家ではなくプレーヤーが尊敬され、「初めにそれをやった者」がリスペクトされる。

だから自分のしたいこと、夢中になれることに一生懸命取り組めばいい。

飽きないように、たくさんの写真を使ってお話しました。もちろん「コンサルタント」ってこんな仕事なんだよ、というお話も。Google知ってる!テスラ知ってる!と、聞いたことのある企業名が出てきたら相槌を打ってくれたり、たくさん質問もしてくれたりしてとても楽しかったです。

一般社団法人 グローバル人事塾 200回記念イベントを開催いたしました。

経営・人事が集まるHRのフラットなコミュニティを目指して、代表理事・樫村が立ち上げてから11年。僕が理事として参画させていただいたのが法人設立の2016年2月ですから、8年も経ったんですね、あっという間です。

その間、数え切れないほど多くの方に支えられて今があります。思い起こすと100回記念は2018年11月にサイボウズ本社で開催したんですよね。まだ昨日のことのように覚えています。(今でも語り継がれる伝説の回でした)

それからコロナ禍を挟んで約5年。オンラインに切り替えたりしながら毎月開催を続けてきました。そして今回の200回。230名の方にお集まりいただき、豪華なゲストの方々のスピーチもあり、皆さまの人事塾に対する愛を感じることができました。

個人的になにかを語る時は「最低10年」は必要だと思っています。ようやくコミュニティとしての存在感も出てきて、人事塾で扱うテーマも時宜に合わせて変遷し、アーカイブを見れば業界のトレンドが分かるくらいにはなってきたのかもしれません。

次の15周年、300回を迎えられるようこれからも人事のチカラで世界を変えべく、止めることなく前進していきたいと思います。

冬の空は透明感があっていいですね。
こちらは新幹線から見えた冠雪している冬の富士です。

こちらは丸の内ビルディングから見下ろす東京駅。

それでは、2月も引き続きがんばってまいりましょう!

僕と村上さんの間に、48万8千枚の歴史が存在した

先日、神戸のピノッキオ(PINOCCHIO)というピザ・レストランに行きました。ここは1962年創業の老舗で、水を使わずにミルクのみで生地を仕上げることで有名です。

60年の歴史を感じる佇まい。お店の外観も店内もレトロな雰囲気で、多くの方に愛されてきたんだなと感じます。神戸にはこのような歴史のある洋食屋やバーが数多くあります。

僕は事前にお店の情報を調べずに行くタイプなのですが、席についてはじめて、ここのピザには創業以来のロットナンバーが付与されているということが分かりました。焼き立てのピザが、番号が記された紙とともにテーブルに届けられました。そして、僕が注文したピザは1,446,872枚目ということでした。

ご一緒した方が「このお店、村上春樹の作品に出てくるようですよ」とおっしゃるので、その場で調べてみると、確かに「辺境・近境」の最後の章、「神戸まで歩く」に登場する。そういえばそんな一文があったかな・・・すっかり忘れていました。

僕は村上さんのエッセイが好きで、ほとんどの作品を読んでいるのですが「辺境・近境」もその一つです。帰宅して久しぶりに手にとってみようかと本を探すと、自室の本棚にちゃんと立てかけてありました。

運ばれてきたシーフード・ピザには「あなたの召し上がるピザは、当店の958,816枚目のピザです」という小さな紙片がついている。その数字の意味がしばらくのあいだうまく呑み込めない。958,816? 僕はそこにいったいどのようなメッセージを読みとるべきなのだろう?

「辺境・近境」村上春樹

 
「辺境・近境」に記されているように、村上さんが食したピザは958,816枚目。阪神大震災が1995年で、その2年後に旅したとありますから、1997年にこのお店を訪れたとすると、それから約26年後に僕がこの場に来ている訳です。村上さんから僕に至るまで、48万8千枚のピザが食されたということですよね。

村上さんは大学に入るまで過ごした阪神間や神戸の街が、1995年の大震災でどのように変わったのかを見るために西宮から神戸まで歩いたとあります。僕も被災した時は18歳で、そこから29年が過ぎました。明日1月17日は、阪神淡路大震災から29年を迎える日です。
そんな時に、結果的に「聖地巡礼」となったのはなにか意味があるのでしょうか。

日々忙しくしていると、目先のことにだけに意識が集中しがちで、本の内容すら忘れていました。こうしてたまに時間を取り、小説やエッセイの世界に飛び込んでみるのも良いですね。仕事や研究に必要な本は読んでいるものの、娯楽としての本は読んでいなかったな。

色々悩んでいた時は、常に本の世界に逃げていた自分もいます。それは知識を増やすためではなく、今、この場から違うところに逃げる手段として使っていたのかもしれません。そう考えると、当時に比べれば悩みは軽減され、自分の思い描いていたような人生を歩むことができているのかもしれませんが、やはり心の栄養のために、こうした時間は必要ですね。

日本人は誰を、何を守ろうとしているのだろう

ちょっと前にお正月を迎えたと思ったら、もう二週間が経とうとしています。
皆さまはどのように年末年始の休暇を過ごされましたか?

僕は普段と同じペースで生活をしながら、地元の廣田神社、越木岩神社、芦屋神社を周り、6日には日帰りで伊勢神宮にお参りしてきました。

伊勢神宮。
2000年続く、生きた神殿。

深い森、大きな木々、美しい五鈴川のせせらぎを見ながら、心の底から清らかな気分になりました。それと同時に、僕の頭は少し混乱してきました。そうか、ここは遺跡でも遺産でもなく、2000年間ずっと人が維持し、守り、呼吸をし続けてきた「生きた神殿」なんだ、と。

世界には様々な神殿がありますが、パルテノンやアンコールワットなど、いつしか人がいなくなり、遺構だけが残されているところがたくさんあります。そのようなところは「世界遺産」として登録されている。でも、伊勢神宮は違う。なぜなんだろう。なぜ、世界で唯一ここだけが数千年の歴史を保っているのだろう。日本人は、誰を、何を守ろうとしているのだろう。

伊勢神宮には、20年に一度、外宮と内宮のすべての社殿が建て替えられる「式年遷宮」があります。前回の遷宮は2013年でしたから、次は2033年の予定。第63回目となるそうです。持統天皇の時代から始まった式年遷宮の回数が記録に残っているのもすごいことですが、1300年続くこのお祭りのために、神宮は木々を育てる森と、その水源となる森の両方を有し、萱山で屋根を葺くための萱を育てているそうです。

環境保護とかSDGsとか色々と言われていますが、なんのことはない。
八百万の神々の思想を持つ日本人は、2000年の間、自然と調和し、自然を敬い、大切にしてきたのでしょう。森を守り、水を守る。当たり前のようで、今となってはとても難しいことをさらりとやってきた。そこにはある種の秩序やルールのようなものがある。

自然界には「エントロピー増大の法則」があります。物事は放っておくと乱雑・無秩序・複雑な方向に向かい、自発的に元に戻ることはないということです。沸騰したお湯は放っておくと冷めるし、家を放置しておくと荒れ廃れてしまいます。エネルギーは低下し、無秩序の状態に変化していくのです。でも、ここは常に人の手で守られてきた。式年遷宮により、技術と精神性が受け継がれてきたんですよね。

そう考えると、自然破壊や、水源を外国資本に簡単に売却するようなことは、どれだけ浅はかで馬鹿馬鹿しいことかと思うのです。技術は進歩し、便利な世の中になり、医学が進歩したおかげで寿命も延びた。でもそれが本当の豊かさなんだろうか。むしろそれは地球から見たら、人間が傲慢で自分たちのことしか考えないモンスター化しているだけなのではないだろうか。それは進化ではなく退化なのではないか。

そして、もう一つ気付いたことがあります。
本物には自然と人が集まる、ということです。

宣伝したり、PRしなくても、いつの時代でも人々が足を運び、お参りする場所というのもすごいことだと思います。廃れたことがないのです。親から子、子から孫へと、日本人の中に脈々と生き続けてきたこと。それって一体なんでしょうね。

最近の僕の関心は、ビジネスでも技術でもなく、日本という国はどういう国で、日本人は一体何を、どんな目的で守ってきたのか、ということです。あまりに長く、深い歴史と文化に、目眩がしそうです。僕の頭では到底理解が及びませんが、今、自分が生きている短い間だけでも、少しでも社会が良くなるよう、皆が幸せに生きることが出来る世の中になるよう、できることをコツコツとやっていけたら、と思うのです。

起業はプロボノの延長線にあった方が良い理由

新年明けましておめでとうございます。
今年は辰年(龍年)ですね。辰年早生まれの僕は今年は年男。干支が4周します。昇竜のごとく勢いをつけていきたいところですが・・・コツコツと目先の仕事に全力投球していきたいと思います。

さて、新年ということもあり、決意を新たにしている方も多いのではないでしょうか。やはり気になるのは自分自身のキャリアについて。僕自身が早々に会社勤めを辞めて一人会社を経営しているということもあり、起業(フリーランスを含む)を志す方から相談を受けることが多くあります。

起業というのは、確かに魅力的な選択肢です。人生100年時代、寿命が延びた分、働く期間もそれだけ長くなるわけですよね。平均寿命が70歳の時代は定年60歳で良かったのですが、平均寿命が90歳になると、これからは80歳までは普通に働かなければならなくなります。そういうことを考えると、一つの会社に依存するのではなく、自分でなにかしら飯の種を持っておいたほうが良い。

しかし難しいのは、起業したはいいが稼げるの?ということなんですね。

個人的な考えですが、起業には向き不向きがあると思っています。
どうも世の中的に、テクニック先行の起業支援みたいなものが多くありますが、どうなんでしょうね。テクニックで稼げている人、僕はほとんど見たことがありません。

一例として、僕が知っている起業家は、学部生の頃になんとなく起業したいという思いから、仕事もなく、ビジネスのコアも定まっていないのに、とりあえず株式会社を登記し、そこから自分たちが得意だった動画制作を軸に、広告マネジメントに事業を拡大させ、都内の一等地にオフィスを構え、社員も増やして会社を成長させています。

理念やパーパスは後付け、SNSでの発信もなし。
最初に仕事をくれたクライアントを大切にし、少しづつ仕事を増やし、経験したことがないことは学び、結果を出し、良い評価を得て、満足したクライアントがまた別のクライアントを口コミで紹介して仕事を増やし・・・という基本的なプロセスを充実に回しているだけです。阪神タイガースの岡田監督が「当たり前のことをやれば勝てる」と言っているのと同じなんですよね。稼げている会社の創業者って、こういうパターンが圧倒的に多いです。ピッチなんて、したことないんじゃないかな。

僕は個人投資もしているので、比較的スタートアップスを色々と見ている方だとは思いますが、その基本がないのに「自分がこうしたい」という思いや理想だけが先行して、ビジネスにならない人を山ほど見てきました。そういう人に限ってSNSでの情報発信は立派なのですが、中身がない。他にも、稼ぎたい!という思いでブルーオーシャンに飛びこんだは良いが、マーケットニーズがなくて売上が上がらず、出資先へのリターンも出せずに頓挫したケースも枚挙に暇がありません。

これに関しては過去記事をご覧ください。
思いはあっても仕事はないという現実にどう対処するか(2023年8月11日)

個人的な意見ですが、起業はセンスが9割だと思っていて、自治体やVCなどによるベンチャー支援やスタートアップス投資などのプログラムには非常に懐疑的な部分もあります。誰でも起業とは聞こえは良いが、無理ですって。(いろんな人を敵に回しそう・・苦笑)

結局、補助金や出資金頼みで実利も上がらずにシャブ漬け状態になり、撤退、廃業というケースが多すぎる。そもそもセンスがないんだと思うし、ピッチのテクニックだけが向上し、先に書いた「ビジネスの基本」が出来ていないケースが多いのではないでしょうか。

では、どうするか。
まずは会社員として会社勤めをしながら、社外での越境プロボノ活動やボランティア活動を積極的にすることで人脈を広げ、経験を磨くことをおすすめしています。会社経営で必要なのは、様々な財布(稼ぎのチャンネル)をたくさん持っておくこと。起業しても、クライアント一社からの受託業務をメインに仕事している方も多いですが、それでは契約社員と変わらないし、なにかあったらすぐに切られてしまうということで非常にリスキーです。

いずれにしても会社員をしながら、新しいことにチャレンジし、お小遣い稼ぎレベルでも良いから、本業以外で稼ぐことをやってみる。その積み重ねの先に起業があるのではないでしょうかね。

とにかく、今年は円高基調が予想されるとはいえ、ビジネス環境が厳しいのに代わりはありません。今年も様々な業界で淘汰が進むでしょう。今一度気を引き締めて、がんばってまいりましょう!すべての人にとって今年一年が素晴らしい年になりますように。

今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

元日の六甲山