親子

父が私用のために一人で帰阪した。

高速バスに乗り、

八ヶ岳の-15℃の世界から、大阪へ。

会社で一人、仕事をしながら、

21時半着の父のバスを待つ。

僕はやっぱり子供だ。

車窓に見える父の姿を見て、

何故か子供のように嬉しくなってしまった。

自分でも驚きの感情だった。

背丈は遠の昔に追い越してしまったし、

特別、威厳があるわけでもない。

ただの、普通の叔父さんである。

それでも、やはり自分の親父なのだ。

自分の娘が生まれて「父」の立場になったからこそ、

刻まれた皺の分だけ、生きてきたのだな、

苦労も悩みも山ほどあったんだろうな、

男の子二人を一生懸命育ててきたんだろうな、と、

そんな風に思うと、一人間として父が愛おしい。

生中と共に餃子とラーメンをすすりながら、

久方ぶりに二人だけの会話である。

もちろん、食事代は僕が出した。

最近ようやく、父に酒を奢れるようになってきた。

父もそれなりに嬉しいらしい。

もう一つ、父に隠すことも照れることもなく、

全ての感情を言葉にして表せるようになってきた。

尊敬、後悔、謝罪、好意、なども。

親子関係って、本当に面白い。

自分も娘とそんな関係になれるといいな、と、

幸せな気持ちになりながらイメージしてみる。