その会社でしか通用しない人間にならないために

30歳前後の方から今後のキャリアについて相談されることが多いのですが、今の若手はしっかりしていますね。やりがいだけでなく、お金の面でもしっかりした考えを持っていてさすがだな、と思います。

巷では「受け身」と称されることが多い若者世代ですが、僕の印象はまったく違って、会社に頼るのではなくキャリアオーナーシップを持っている人が多い。自分の親世代の苦労を見ていたり、日本の凋落を目の当たりにして育っているので、良い意味で堅実、悪い意味で保守的って感じ。最初から会社に頼って生きていく、この会社に入れば安心、という考え方が薄いんですよね。そういう意味ではしっかりした人たちが多いんですが、一方、知識だけが多くて頭でっかちになっている人も中にはいます。話を聞いていて、今のままではその会社でしか通用しないなと思う人もいます。

今の時代「その会社でしか通用しない」というのはとても危険です。

勤め先がいつまであるか分からないし、財布をいくつも持っておかないと生活できない世の中になっていますよね。データを見るとすぐに分かるとおり、長く働き続けたらその分退職金が増えるということもなくなりましたし(退職金平均額、20年で1,000万減少 退職金が減り続ける理由とは?)、そもそも中小企業では退職金制度がない会社も山のようにあります。ですので「自分で稼ぐ力」と「いつどこに行っても通用する」ポータブルスキルを身につけておいた方がいい。

そのために、相談者の方に勧めているのが「抽象化能力」の向上です。
抽象化能力については、下記の過去記事に詳しく書いています。

「本質を見極めることと、抽象化能力の関係について(2021年3月23日)」
「世界を広げるというのは人脈を広げるのではなく、関心の対象を広げるということ(2021年10月10日)」

結構若い人に多いのが、すぐに答えを見つけようとする傾向と、情報を持ちすぎて知識が多いため手段が目的になっているケースです。

最近相談された事例です。
あるプロジェクトの進捗が遅れているから人を増やしたいという相談。中小企業はただでさえ採用難、人材不足なのでこういう課題はいくらでもあります。また最近では人材流出の問題もあります。今いる数少ない社員をつなぎとめておくことすら難しいのです。こう考えると、人を増やすことってめちゃくちゃ難しいですよね。それに、他に似たようなことをしている会社がたくさんあるのであれば、よほどの高待遇でないと人は来てくれません。

でもその人の見ている景色は「人を増やすこと」だけなんです。
よくよく掘り下げて状況を聞いてみると、サービス残業当たり前、製品はローンチせず赤字垂れ流しという状態らしい。このような状態なら、採用をするのではなく、まず今がんばっている社員たちに残業代を払い、インセンティブをつけることが先決。その上で、赤字事業を黒字に持っていくためにどうすれば良いかを経営層が考え、必要があればピボットの判断を下すこと。「現場に人が足りない、製品リリースが遅れている」=「じゃあ、人増やすか」は、あまりにも稚拙な判断です。このケースの場合は採用手法以前の問題で、その手前でやるべきことがたくさんある。でも、相談者の方は、どうすれば採用できるか、採用手法はこんなのがあるがどう思うかというわけです。まさに木を見て森を見ずなんですよね。物事の本質を見極めるためには、抽象化能力が必要です。

話が逸れましたが、「どこに行っても通用するビジネススキル」を身につけるには、上記に加え、社外の越境プロジェクトに参加し、全然知らない人たちとゼロイチでプロジェクトを起こすことが一番だと考えます。社内では多少ミスしたりしても周りは自分のことを知っている人ばかりなので許してもらえる。でも、安全圏で仕事をしていると、それこそ社外で通用しない人間になってしまいますからね。自分のことを全然知らない人ばかりのところで力を試してみる。外に出ましょう。

というわけで話が分散してしまいましたが、今週もがんばってまいりましょう!

より良く生きていくためには。個人として会社として。

今年に入ってからジェットコースターのように日々が過ぎ、いつの間にやら2月に入っていました。この1月から3月に掛けて、関わっている各業界団体の大きなイベントが続きますので、一部バックデートしますがご紹介しておきたいと思います。

まず、理事を努めている一般社団法人グローバル人事塾の10周年記念イベントを1月18日に東京の日本橋で開催いたしました。このような状況下にも関わらず、当日はHR業界のトップリーダーから各企業の人事担当者様など300名近い方にお集まりいただき、お祝いの言葉を頂戴いたしました。もう何年ぶりだろうというくらいリアルな場での熱気を感じながら、この10年を皆さまと振り返ることができました。

昨今、労働人口不足や少子化、働き方改革など、企業としては労働力確保と新時代に向けての組織改革、個人としては長引く不況下と低成長社会の中での生活設計戦略など、「働くこと」に対する課題が浮き彫りになっています。グローバル人事塾では、「人事のチカラで世界を変える!」をキーワードに活動を行ってきましたが、まさに今こそ広義の意味での「人事のチカラ」が求められていると思います。業界のリーダーの皆様からも激励のお言葉を多数頂戴いたしました。これからも企業横断的にフラットに集まることができるこの場をずっと続けていきたいと思います。運営の皆様、ご参加いただきました皆様、本当にありがとうございました。

さて、東京の周年イベントには参加出来なかった皆様のために、大阪でも開催いたします。日時は2/21(火)、場所は十三のプラザオーサカです。イベントページはこちらから。皆様のお申し込みをお待ちしています。

さて、話は変わりまして。

国連のグローバル・アジェンダの中で、ポストSDGsとして提唱されているのがウェルビーイングです。人生100年時代を4つの時代(春夏秋冬)に分ける考え方が中国にはあり、50〜75歳までを「白秋世代」と呼んでいます。まさにこの白秋世代が日本において人口の40%近くを占めるまでになっています。ところが今の日本では、会社の仕組みとして55歳役職定年、60歳定年退職というシステムになっており、50を超えるとやりがいを感じなくなってしまう人が多いのも事実。そこで、この白秋世代に対して企業はどう向き合うべきなのか、そして、個人としてシニア世代をどう幸せに生きていくか(=ウェルビーイング)を考える必要があります。

このテーマについて企業コンソーシアム的に研究していきましょうというのが「白秋共同研究所(所長:予防医学者 石川善樹先生)」です。2020年の創設時、神戸の有力企業を中心に35社が集まり、現在、任意団体として活動していますが、この春以降、公益性と社会性をもたせ関係企業や団体を更に増やして本格的にドライブしていくために一般社団法人化することになりました。

3月7日にANCHOR KOBE(アンカー神戸)で社団法人化に向けてのキックオフセミナーを神戸商工会議所さんと共催します。協力団体として(一社)人と組織の活性化研究会(神戸大学APO研)、そして、グローバル人事塾も名を連ねております。基調講演は「問い続ける力」や「むかしむかし あるところにウェルビーイングがありました」で著名な予防医学者の石川善樹先生を東京からお迎えして行います。パネルディスカッションもありますよ。

参加費無料、どなたでも参加できます。後半で私から社団法人の目的と活動についてプレゼンさせていただきます。神戸の美しい夜景を見ながら、皆様とディスカッションできれば幸いです。ぜひ、ご参加ください。

イベントページ、お申込みはこちらから(peatix)

人への投資と成長する企業の関係について

24新卒採用向けと思われる企業のブランディング広告がちらほら流れる時期になってきました。少なくとも新卒一括採用は未だ主流なので、新卒の方向けに「こんな会社だけはやめておけ」という内容を書いておきたいと思います。学生はこのブログは読んでいないと思いますが、この内容は転職したい社会人にも当てはまると思います。

よく大企業と中小企業という分け方がされますが、もし選択できるとすれば大企業への入社をまずはおすすめします。大企業の良さというのは、やはり財務的体力があること。そして、(一部の企業を除いて)経営トップに権限が集中しないことが挙げられます。

まず、財務的体力について。

お金がある=新しいことへの投資ができるという点が大きなメリットです。その投資の中でも一番重要なのは「人への投資」です。たとえば、社員研修。社員の能力向上にどれだけお金を掛けることができるか。企業目線では組織開発という言葉がよく使われます。また資格取得や外部の教育機関でのリカレントに社費で通わせてくれるなど、人への投資を積極的に行っている会社は、新しい事業を始める時やピボットする時でもすぐに動ける人的リソースが準備できているので、停滞することがありません。要するに将来を見据えた準備を常にできることが大きな強みです。

二番目に、経営トップに権限が集中しないことについて。
中小企業で多いのは、経営者が人への投資を渋るケースです。典型的な中小企業の特徴は、目先の儲けを最優先すること。つまり「今すぐ儲からないことには投資しない」んですね。ですので、研修、教育と聞いた時に「それやって儲かるの?」という反応になります。また、中小企業はオーナー社長の公私の財布が実質同じになっていることが多く、すぐにリターンを生まないことに投資することは、「自分の財布が痛む」と勘違いしてしまい、二の足を踏むか、決定を先送りしてしまいます。結果的に、従業員の能力は向上せず、能力が高い人間も取ることができないので、停滞→衰退に向かってしまいます。ですので、こういう会社に入ってしまうと、スキルアップが軽視されてしまうのと、個人としても会社としても成長を見込めません。

また、外部のコンサルを入れての組織開発を渋る経営者もいますが、これは上記の「すぐのリターンが見えない」に加えて、「自分の悪口を言われるのではないか」という不安と恐れがあるからです。1 on 1 で社員面談を行う際、そこに自分が入っていないことが不安なんですね。でも、直上の上司や経営陣を前にして本音が言える社員は、ほとんどいませんよね。それに、人への投資をしてもいつかは辞めるんだろ、という態度を示す経営者もたくさんいます。一方、大企業は経営トップに権限が集中しないので(もちろん大企業でも権限が集中するところはありますが・・・)、組織をシステマチックに回すことができます。

便宜上、大企業、中小企業という分け方をしてしまいましたが、もちろん、大企業でも人への投資を軽んじる会社もありますし、中小零細でも素晴らしい会社はいくらでもあります。どちらにしても「浮かぶも沈むも経営者次第」です。まとめとして、一言でいうと人への投資について「それやって儲かるの?」と渋る経営者は、人をコストとしか見ていないのでおすすめしません。人への投資を軽んじている会社に将来はなく、経営者トップに権限が集中している会社は、経営者の器以上には大きくなりません。まあ、外から見てるだけではなかなか分からないことも多いので、中の人に実情を聞くなどして、リアルな情報収集に努めてください。

自分の将来を見据えた上で、会社選びをすることは本当に重要です。
それでは、学生の皆さん良い就活を!!

たゆたえども沈まず

いろんな人に会い、いろんな所に出入りしていると、景気の良い話から沈下衰退の話まで幅広い情報が入ってきます。

最近では数十億円のマンションをキャッシュで買ったとか、北海道のスキー場に行ったら物価が上がっていてホテル一泊一部屋20万円だったとか。でも、こういう人たちが口を揃えて言うのは、日本国内でありながら、そういう場所には外国人しかいない、ということ。百億単位の不動産をキャッシュで買っているのは中国人で、スキー場のホテルやレストランには日本人はおらず、外国人ばかり、それも東南アジア系の人が多いのだそうです。

こういう話を聞いていると昨今ニュースを賑わせている「貧しい日本」がクローズアップされます。レートの高い観光地や都心の不動産はもはや日本人のためのものではなく、外国人のためのもの。かつてロックフェラーセンターやゴッホの絵画を買い漁っていた時代の日本もありましたけれど、今となっては昔の話。今はこれが現実だし、いろんな意味で成熟し切った日本にとっては価値観の多様化も相まって、昔はこうだったと懐古する人も少なくなってきたような気もします。

僕が好きなフレーズの一つに、パリ市の紋章に記されている標語があります。

“Fluctuat nec mergitur”
「パリは、たゆたえども沈まず」

この標語を知ったのは、確かパトリック・モディアノの小説の中だったと記憶しているのですが、人間ってたくましいよな・・・と感じたことを覚えています。それ以来、自分の心の中でも「たゆたえども沈まず」はなにかあった時に気持ちを奮い立たせる魔法の言葉になっています。パリに限らず、どんな国でも街でも、戦乱、天災などの歴史の荒波に揺さぶられながらも沈まずに生き抜いてきた。そんな力強さを感じませんか。

景気の良い話とは裏腹に、ダメな日本がクローズアップされる昨今です。でも、いつの時代も人々は一生懸命働き、生き抜いて来たのでしょう。今日も飯がうまい、外の空気が気持ちいい、休憩時間の缶コーヒーに小さな幸せを感じながら、目の前の仕事をがんばってやってきたのでしょう。何かや誰かと比べるのではなく、自分にできることの一生懸命で日々を積み重ねていく。それだけで十分素敵なことだと思うんです。

というわけで、また明日から新たな一週間がスタートします。仕事山積でちょっとだけ忙殺され気味ですが、今週は今年の第一回目の(短い)東京出張です。

それでは皆さん、また明日からがんばりましょう。

黙って静かに暗闇の中でこそ輝く美に目を向けよう

体調不良のために文字通り「寝正月」になってしまったおかげで、たくさん本を読むことができました。今年に入って、もう四冊目に突入しています。我ながらハイペースですが、スマホから離れて庭木を眺め、日の陰りを感じている時に、久しぶりに読みたいなと思って引っ張り出したのが「陰翳礼讃」です。

谷崎の作品の中でも、何度も読み込んでいる「陰翳礼讃」ですが、この本も、先週紹介した村上春樹さんの「走ることについて・・・」と同様、マーカーだらけになっています。

しかし改めて、今の時代に必要な本だよな。いや、今の「自分」に必要なのかもしれない。1933年に書かれ、日本の美を暗闇と影に見出すこのエッセイは今の時代にこそ見直されるべき日本の美学ではないかと思うのです。

昭和初期、西洋で発明された便利な「文明の利器」が押し寄せる中、谷崎はその便利さを認めながらも日本家屋にはおおよそフィットしないそれらを見て、明るくピカピカのものではなく、陰翳によって生かされるのが日本の美であると語っています。

照明にしろ、暖房にしろ、便器にしろ、文明の利器を取り入れるのにもちろん異議はないけれども、それならそれで、なぜもう少し我々の習慣や趣味生活を重んじ、それに順応するように改良を加えないのであろうか

西洋の方は順当な方向を辿って今日に到達したのであり、我らの方は、優秀な文明に逢着してそれを取り入れざるを得なかった代わりに、過去数千年来発展し来った進路とは違った方向へ踏み出すようになった

美というものは常に生活の実際から発達するもので、暗い部屋に住むことを余儀なくされた我々の先祖は、いつしか陰翳のうちに美を発見し、やがては美の目的に添うように陰翳を利用するに至った

陰翳礼讃

 

その国や地域の文化、言語、慣習、住居などは、その土地の地形や気候、作物、手に入る材料などによって形成されています。しかし文明が進み、現代のようにグローバルな社会になれば、面白くもなんともない画一的な製品に囲まれ、同じようなサービスを同じような値段でどこの国でも入手できるようになりました。

経済も同じで、GAFAMのような巨大世界企業が世界を席巻し肥大化する一方、すべての国の住人がそれらが提供するサービスやテクノロジーに従属するような形になっています。海外から様々な経営手法や管理手法が輸入され、それが合うか合わないか関係なく、日本の会社にも導入されていき、それが「最新の手法」としてもてはやされます。確かに生活は便利になった。でも、そもそも全然違う文化人種に対して、テンプレのように何かを当てはめるのはどうなのかな。そこに「らしさ」みたいなものはあるのかな。日頃から、そんな風に考えています。

谷崎の陰翳礼讃は、それが書かれてから90年後の今、まさに自分が抱えるモヤモヤをスパッと解決してくれるバイブルのように感じます。

この10日間で気づいたこと

世間の流れに違わず、自分も公私ともに年末進行でバタバタしています。書きたいことはたくさんあったのですが、そんなこんなで前回の更新から10日ほど空いてしまいました。

今週は月曜日から木曜日まで今年最後の東京出張でした。いろんな会社を訪問し、取引先や友人たちと飲み、グローバル人事塾で仲間たちと語らっていると、時間なんてあっという間に過ぎてしまいます。朝から夜までずっと動くというのは、最近のスローな日常生活では考えられず、体力的にもかなりダメージを受けました。昨年まではよくあんなに出張ばかり行ってたなあ。信じられません。

そうそう。
この10日間でいくつか気付いたことがあります。

一つ目。事業には客観的視点が必要なこと。
ここ最近、様々な企業の方針変換に触れることがありました。自分も組織の中に長くいたので良く分かるのですが、客観的視点を常に持つようにしておく、それができないのであれば、外部の人材やマーケ会社に依頼するなどして、意思決定に対して常に第三者チェックを加味する必要があります。そのために社外取や顧問などが重宝されるのですが、規模の小さい会社はなかなかそうも行かず、結局「井の中の蛙」的に社内事情とトップの判断だけで意思決定して、失敗してしまうというのが良くあるのです。社外から見た自社と社内から見た自社には大きな乖離があることを意識することが大切です。見ていて心配な会社がちょこちょこあります。


二つ目。セレンディピティは、自分に準備ができている場合にのみ与えられるもの。むやみやたらに動いても何も変わらない。
がむしゃらに動く人、とにかく気になるものは何でもやってみる人。いろんな人がいて全然OK、それはそれで素晴らしいことなのですが、それが結果につながらない人は「自分の中で準備ができていない」のかもしれないなと思うことがありました。つまり、自分がそのレベルに達していない。だからセレンディピティに出会わない。チャンスの種に出会っても物にできない。自分の中の価値観、軸をぶらさず、目標に向かって日々努力を重ねている人に与えられるギフトのようなものなのでしょうね。


三つ目。自分は寒さに弱かった。忘れていたわけではありませんが。

ここ数日のクリスマス寒波にすっかり身体がダメージを受けています。東京の夜も寒かったけれど、特に今日のゴルフは死にました。気温0℃のゴルフ場で風がビュービュー、体感気温は極地。ホールアウト後に何度も風呂に浸かり、身体を芯から温め、温かいものを食べ、暖を取っていますが、凍った身体の芯は溶けず、頭痛となって表に出てきます。いや、弱ったな。色々とがんばらねば。

というわけでいよいよ年末です。
お体に気をつけてお過ごしくださいね。


ブレイクスルーの方法

仕事柄、複雑かつ難しい課題について相談を受けることが多いです。

多くの場合そこに答えはなく、これだけの予算を投下すればこれだけの効果が得られると予測できるようなマーケティングや広告戦略は別にして、個別の経営課題や人の問題、また、そもそも市場がないところに市場を創出していくようなプロジェクトなどには、こうすれば解決しますよという魔法のテンプレートはありません。先行事例を調査し、データを分析し、ステークホルダーの声を聴き、課題を抽出して、戦略を深耕していく。自分の知識や経験値なんて高々知れているので、常に頭をリセットして考える必要があります。

リセットの方法として僕が日々やっていることは、PCや資料から離れ、ジョギングをしたり、料理をしたり、庭掃除をしたりという単純な作業にシフトすることです。黙々と手を動かしている時にふと絡まっていたスパゲティがほどけて、ブレイクスルーすることってありませんか?僕は袋小路に迷い込んだら、必ず、料理、掃除などを始めちゃうので、ボトルネックにはまればはまるほど、料理の作り置きが増え、庭がきれいになるという副産物が得られています。良いのか悪いのか別にして。笑

もうひとつ、ブレイクスルーの方法として「誰から」「何を」インプットするかもとても大切ですよね。上手に言語化できなかったことが、本の中に書いてあったり、人の話を聞いて「これか!」と気づくこともあります。

昨夜はシニア世代のウェルビーイングを考える企業コンソーシアムの会合と忘年会があり、そこで稀代の経済学者、宇沢弘文先生の長女で医師の占部まりさんをお招きしての社会的共通資本をテーマにしたセッションがありました。たくさんのお話があった中で、自分に特に刺さったのは、「金銭的授受が発生しない関係性が一番良い。大切なことは経済に乗せない」「医療にお金をかけるよりは、人とのつながりに投資していくべき。良好な人間関係を持つ人は寿命が延びる」という点を経済学と医学の観点から分析されたお話でした。

ああ、まさにそういうことだ。自分も「お金にならないことに一生懸命」「利害関係のない人間関係をいかに広げるか」をテーマに生きてきたし、それでたくさんの人間関係やサードプレイスをアセットとして得ることができています。結果として、毎日幸せに暮らすことができている。恐らく、これからもそうしていくでしょう。自分が無意識に良かれと思ってやってきたことが、実際に研究されて結果が報告されているというエビデンスを専門家のお話を通して知ると、納得感が深まり、自分の言葉として話すことができるようになります。

料理掃除もいいですが、こういうセッションでお話をお聴きし、参加者の皆さんとディスカッションすること。本当にこういう機会は貴重です。

昨夜の懇親会の一コマ

動くと違う景色が見えてくる

年末に向けて、今年一年の振り返りを始めました。

僕自身、成長至上主義者というわけではありませんが(かつてはそうでした)、一年前の自分から見た今の自分がいたとして、その自分が「思い描いていたとおりの自分」に少しでも近づけている方が良いなとは思います。今年も昨年と同じだったな〜と思うと、なんだか悲しくなりますもんね。

一年の棚卸しの仕方は色々とあるとは思いますが、まずは年頭に立てた目標を達成できたか。昨年から変わったこと、成長できたことは何か。この「変わったこと」を具体的に実感し、言語化できるかどうかがとても大切だと思っています。

20代の頃は、会社も仕事もすべてが新鮮で赤ちゃんが子供に成長するかのごとく、毎年できることが目に見えて増えていく時期ですが、40代になると自分から動かなければ周りの環境は変わらないし、自分も大して成長しない(ある意味安定する)という時期に差し掛かります。それが「脂がのる」「経験値が増える」という言い方をすることもありますが、加算ではなく、乗算で結果を出して行こうと思うと、貯金を切り崩すやり方ではなく、新たな環境に身を置き、自分のスキルを試し、結果を出すということがとても大切なことだと思っています。そう、環境を変えること。

動けば見える景色が変わる。
身を置く環境を変えれば付き合う人々が変わる。

今年は自分にとって、これからの人生の第一歩を踏み出した年になりました。会社を辞めて裸一貫、ゼロから仕事をスタートしました。多くのご縁に恵まれ、たくさんのお仕事をいただきました。様々な会社に関わらせていただき、素敵な仲間たちと一緒にお仕事をさせていただいています。独立しなければ関わることのなかった人々との新たな出会いが生まれ、その中でまた成長させていただく。

そして、何より自由がある。
誰から管理されることも、制限されることもない。自由に時間を使い、自由に行きたいところに行き、自由に会いたい人に会える。

このことは本当に大きなことで。今日も打ち合わせの帰りに枯葉を踏みしめて歩きながら空を見上げ、ああ、今、僕は本当に幸せだなと思ったのです。

具体的な振り返りはこれからですが、今のところ自分で点をつけるとすれば、100点以上をあげたいなと思っています。

12月に入りましたね。皆さまお元気ですか。

今年は本当に紅葉が美しくて。どこに行っても紅葉の色の濃さに目を見張ります。下の写真は早朝のゴルフ場。朝日が差してきれいですね。

12月に入ると同時に一気に冷え込みました。秋が過ぎて冬が来たという感じですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

私の方はというと、先日投稿した記事(現在の仕事の話」 2022年10月26日 )のとおり、日々忙しく仕事をさせていただいています。今年の3月に会社を退職してまだ8ヶ月しか経っていないというのに、こんなに目の前の景色が変わるものなのか。そしてこんなにあっという間に時間が経つものなのか。今年の春先がもう遠い昔のように感じます。

目の前の当座の仕事と、未来をつくる仕事。

自らの感覚の中で現在と未来を行ったり来たりしながら、日々走り回っています。出会う人たちの種類も少しづつ変わってきて、やはり類は友を呼ぶというか、点と点がしっかり線で繋がるというか。非常に刺激的で、そういうことを日々実感しながら、街を歩き、季節の移ろいを感じています。

そう、季節をしっかり感じることって大切ですね。

11月後半から忘年会もどんどん入って来ました。やあ、久しぶり。元気でしたか?そう声を掛け合い、久しぶりに顔を合わせる人たちと酒を酌み交わす。ついつい飲みすぎてしまうこともありますが、お互いの近況を確認し合うことの大切さを年々感じるようになっています。

我が家の紅葉もがんばっています。
その年、その年で、色の濃さが変わるのが面白いですよね。

いつから生えている木々か分かりませんが、慌ただしく動く人間を尻目に、悠々と生き、季節ごとに色を変える木々には力強さと余裕を感じます。ビジネスにはスピードが求められますし、日々目の前を膨大な情報が行き来していますが、誤解を恐れずにいうと焦ったり急いだり一喜一憂したとしても、結果はほとんど変わらない。そのことを木々は教えてくれているようです。

今年のお気に入りはこの一枚。↓

結局は同じことの繰り返し。だから今日もがんばろう。

この一週間も様々なニュースがありました。

先週投稿したTwitter社に関しては「激務が嫌なら違う会社にいけ」というイーロンの司令で、オフィス出勤、激務が求められるようになり、無料カフェテリアの見直しもされているとのこと。赤字会社なので、そこから見直すというのは当然っちゃ当然なのですが、環境変化についていけない社員は転職を余儀なくされるでしょう。

今後、人がいなくても回る会社(人がいなくても回ることに気付いてしまった会社)はどんどん人を切っていくでしょうし、逆に人が必要な会社はそこから溢れた人材を採用しやすくなるでしょう。大手製薬企業やIT企業のように大幅な人員削減でスリム化を図り、高度経済成長期のごとく「少数精鋭のモーレツ社員」を求める企業がまた増え始める一方、そうでない会社もある。いずれにしても一部のエグゼクティブ層を除き、転職先では今の条件待遇を維持するのは難しいので、誰でも会社軸と個人軸の二本足でしっかり立つ必要があると思います。

日々ニュースを目にしていると、歴史は繰り返すんだなというのが実感です。小学生の頃に歴史を年表で学ぶため、左から右に直線的に歴史は繋がっているというイメージですが(もちろん時間は一方通行でしか流れないのでそのとおりなんですけれど)、実はスパイラル、螺旋状に回っているともいえます。まさに循環。一度片側に倒れば、また逆に揺り戻す。一周回ってスタート地点に戻る。経済史や歴史書などを読んでいると、基本人類の歴史って、戦争、疫病、天災の繰り返し。その大きな流れの中で市井の人々があれこれ工夫して生きて来たというだけのことです。

そう考えると、少し気楽になるんですよね。

時代の変化は目まぐるしく、ついていくのが大変だし、未来の予測もできませんが、そもそも未来の予測なんて誰もできやしないし、古代でも中世でもどの時代に生まれても、目の前で起こっていることはさほど変わらないし、今と同じように一喜一憂しながら毎日を生きている、それだけのことでしょう。

人間の本質はそんなに変わらない。
お腹が空いている時のおにぎりは絶対に美味しいし、眠くなれば寝る。

人間ってそういうものなんでしょうね。
というわけで今日も一日がんばりましょう!