30歳前後の方から今後のキャリアについて相談されることが多いのですが、今の若手はしっかりしていますね。やりがいだけでなく、お金の面でもしっかりした考えを持っていてさすがだな、と思います。
巷では「受け身」と称されることが多い若者世代ですが、僕の印象はまったく違って、会社に頼るのではなくキャリアオーナーシップを持っている人が多い。自分の親世代の苦労を見ていたり、日本の凋落を目の当たりにして育っているので、良い意味で堅実、悪い意味で保守的って感じ。最初から会社に頼って生きていく、この会社に入れば安心、という考え方が薄いんですよね。そういう意味ではしっかりした人たちが多いんですが、一方、知識だけが多くて頭でっかちになっている人も中にはいます。話を聞いていて、今のままではその会社でしか通用しないなと思う人もいます。
今の時代「その会社でしか通用しない」というのはとても危険です。
勤め先がいつまであるか分からないし、財布をいくつも持っておかないと生活できない世の中になっていますよね。データを見るとすぐに分かるとおり、長く働き続けたらその分退職金が増えるということもなくなりましたし(退職金平均額、20年で1,000万減少 退職金が減り続ける理由とは?)、そもそも中小企業では退職金制度がない会社も山のようにあります。ですので「自分で稼ぐ力」と「いつどこに行っても通用する」ポータブルスキルを身につけておいた方がいい。
そのために、相談者の方に勧めているのが「抽象化能力」の向上です。
抽象化能力については、下記の過去記事に詳しく書いています。
「本質を見極めることと、抽象化能力の関係について(2021年3月23日)」
「世界を広げるというのは人脈を広げるのではなく、関心の対象を広げるということ(2021年10月10日)」
結構若い人に多いのが、すぐに答えを見つけようとする傾向と、情報を持ちすぎて知識が多いため手段が目的になっているケースです。
最近相談された事例です。
あるプロジェクトの進捗が遅れているから人を増やしたいという相談。中小企業はただでさえ採用難、人材不足なのでこういう課題はいくらでもあります。また最近では人材流出の問題もあります。今いる数少ない社員をつなぎとめておくことすら難しいのです。こう考えると、人を増やすことってめちゃくちゃ難しいですよね。それに、他に似たようなことをしている会社がたくさんあるのであれば、よほどの高待遇でないと人は来てくれません。
でもその人の見ている景色は「人を増やすこと」だけなんです。
よくよく掘り下げて状況を聞いてみると、サービス残業当たり前、製品はローンチせず赤字垂れ流しという状態らしい。このような状態なら、採用をするのではなく、まず今がんばっている社員たちに残業代を払い、インセンティブをつけることが先決。その上で、赤字事業を黒字に持っていくためにどうすれば良いかを経営層が考え、必要があればピボットの判断を下すこと。「現場に人が足りない、製品リリースが遅れている」=「じゃあ、人増やすか」は、あまりにも稚拙な判断です。このケースの場合は採用手法以前の問題で、その手前でやるべきことがたくさんある。でも、相談者の方は、どうすれば採用できるか、採用手法はこんなのがあるがどう思うかというわけです。まさに木を見て森を見ずなんですよね。物事の本質を見極めるためには、抽象化能力が必要です。
話が逸れましたが、「どこに行っても通用するビジネススキル」を身につけるには、上記に加え、社外の越境プロジェクトに参加し、全然知らない人たちとゼロイチでプロジェクトを起こすことが一番だと考えます。社内では多少ミスしたりしても周りは自分のことを知っている人ばかりなので許してもらえる。でも、安全圏で仕事をしていると、それこそ社外で通用しない人間になってしまいますからね。自分のことを全然知らない人ばかりのところで力を試してみる。外に出ましょう。
というわけで話が分散してしまいましたが、今週もがんばってまいりましょう!