SFの PIER 39 で「ラオスにいったい何があるというんですか?」を読む

4ヶ月ぶりのシリコンバレーです。

前回の訪問は昨年の9月中旬。その頃はまだ夏の名残が残っていて(と言っても、ここには日本ほど極端な四季というものはないと思いますが)、車でも冷房をガンガン掛けながら汗をかきながら走り回っていたと思います。そういう意味では、今の気温は15度程度で気持ち良く過ごせます。

すっかり馴染みとなった SFO(サンフランシスコ国際空港)に到着後、サニーベールの定宿にチェックインする前に市内の PIER 39 でランチをすることにしました。ランチのお供は、村上春樹さんのこの本。サンフランシスコのベタな観光スポットで読む本のタイトルとしては、なかなかシュールです。

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ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集

この本は数々の国を旅している村上さんの旅行記、エッセーです。冒頭のボストンの話は「走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)」に含まれる内容とも被っていたりするのですが、それでもとても面白い。9時間のフライト中も時を忘れて読むことが出来ました。

ちなみに、PIER 39 ではお決まりのクラムチャウダーとシュリンプサラダを。これを食べなきゃ始まりません。ボウル代わりのパンも美味しい!

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今日は曇天でしたが、マーチン・ルーサー・キング・ジュニア・デーで祝日ということもあり、たくさんの人で賑わっていました。

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明日からは怒涛のスケジュールですが、今日は早めに休んでしっかりがんばりたいと思います。
 
 

近頃のオアシスと、経験値の話


一仕事終えた後は、風呂蓋をテーブル代わりに半身浴しながら酒を飲むというのが最高ですよね。

今夜は10kmほど走った後にすぐ、ブラックニッカと炭酸水、グラスを用意して風呂蓋の上に置き、iPhoneから流れるJAZZをBGMにマッサージするというのをやっておりました。これぞ、週末の至福の時間です。そして最近の「心のオアシス」が、「村上さんのところ」という10年ぶりに村上春樹が読者からの質問に答えていくという交流サイトです。このやり取りが面白くて。なんだかとてもホッとするし、正されるような気します。毎日マメに更新されているので、電車での移動中、疲れた時など、清涼剤のように見てはクスクスと笑っています。


経験を積むことって何か良いことがあるのかな、と思う時がありました。特にITの業界では、コアな技術は別にするとデザインやプログラミングなど、一度現場を離れてしまうと自分の持つ技術なんてあっという間に古くなってしまうものです。

しかし、今朝、ああ、経験を積む良さってこういうことなのかなと思う出来事がありました。先月から米国の某取引先と2月初旬のアポ調整を行なっていたのですが、なかなか決まらず。あらかじめ決めていた期日も過ぎ、今回は見送りかなと、諦めてフライトを手配したのに、今朝メールを見ると「スケジュールが調整できた、訪問を歓迎する」と。笑

さあ、そこからがバタバタです。各方面連絡し、フライトを変更し、米国内便のフライトを乗り継ぎ検索して予約し(残席3というフライトもあり・・・死ぬかと思った)、レンタカーも手配し、WiFiも、あれもこれも・・・と、なんだかんだで、あっという間に手配を完了しました。

こういう時に、自然に「あれをして、これをして」と動けるのが、まさに経験値なんだと実感です。トラブル処理能力、火事場のクソ力的仕事って、やはり(出来れば避けたいけれど)経験がものを言うものだと思いますよね。まあ、ちょっと焦ったし、出張も長くなったけれど、うまくまとまったのでよかったです。

レース中の、自分でいて自分でいないような感覚について書いてみる


昨日は今年の初レース「新春武庫川ロードレース」のハーフマラソン。地元の第41回を迎える伝統ある大会だけど初エントリーだった。

僕はほとんどのレースに一人でエントリーしている。当たり前だけど、会場へ向かう電車も、駅から歩いている時も、ゼッケンをウエアに取り付けている時も、トイレに並んでいる時も、ずっと一人。

たくさんのランナー達の中に「自分」という存在が混じっている。これは何かの間違いじゃないのか?と、不思議に思うことがある。日常的に走っているし、レースという一つの目標のために練習しているし、ウエアやシューズも充実させている。レース後にすぐ飲めるように、携帯用の保冷ケースに缶ビールとハイボールも入れて持参している。

それなのに「どうして、自分はここにいるんだろう」と、空中に浮かんで斜め上から一人で立っている自分を見ているような感覚を覚える。不思議でしょう? 一方で、スタート地点に並んでいる時に冷えないように体を動かしながら周りの人を見回し、「ああ、この人達もなるべくしてランナーになった人なんだなあ」と主観的に見ている自分もいる。空中と地上とを行き来しているような、とても不思議な感覚がスタート前の時間だし、走っている時も何故か「自分はなんで走っているんだろう」と思うことが多々ある。

「なるべくしてランナーになる」

これは、村上春樹の「走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)」の中の一文だ。レース前もレース中も、色んな場面で文中のワンフレーズを思い出す。僕はハルキストでもないし、この本に出会って走り始めた訳でもないのに、どうやら「走ることについて〜」はランナーの心情を本当に良く表現していて、共感する箇所が多過ぎるくらい多く、自分が意識している以上に、ランナーとしての自分に大きな影響を及ぼしている気がする。ちなみに、村上春樹ではこの本と、「もし僕らのことばがウィスキーであったなら (新潮文庫)」は、自分の趣味とまさに重なるので(もちろん、先生のレベルには足元にも及ばないのだけど)、大好きである。

「マラソンは万人に向いたスポーツではない。小説家が万人に向いた職業ではないのと同じように。僕は誰かに勧められたり、求められたりして小説家になったわけではない(止められこそすれ)。思うところあって勝手に小説家になった。それと同じように、人は誰かに勧められてランナーにはならない。人は基本的には、なるべくしてランナーになるのだ。」(「走ること〜」71P 抜粋)

確かにそのとおりで、僕の周りにいる人たちも、何かがきっかけとなってランナーになり、何らかの事情でレースにエントリーすることになった。そんな人達が2000人集まっている。そして、その人達を応援する人々もボランティアの方々もたくさんいる。なんて素敵なんだろう。だから、僕は仮に自分が一人だったとしてもレースの雰囲気が大好きなのだと思う。そして、シーズンに何回もエントリーしてしまうんだと思う。


レースの結果は、まあ合格点。4’47″/kmペースの1:41’23″でゴール(手元では21.21kmだったので、多少誤差はあるかも)。目標の100分切りは出来なかったけれど、本命のレースは4月の芦屋国際ハーフマラソン、そして、フルマラソンの本命は3月の篠山ABCマラソンだ。それらの大会のための足慣らしとしては十分な出来だった。

さあ、篠山まで二ヶ月ない。3時間40分台を目標にしているので、これから一生懸命練習しないと。レース後に美味しいビールを飲むためにも。

走ることについて語る、村上春樹の心情とシンクロしたりする日曜日


村上春樹の「走ることについて語る時に僕の語ること」をパラパラと眺めていると、そこにはランナー心理をこれでもかと的確に表現したテクストがズラリとならんでいて、「ああ、そうそう、ほんとに、そう」と共感せざるを得ません。

彼は「走ることを人に薦めることはしない」と述べ、走ることには適正がありランナーはランナーになるべくしてなる、勝手に走り始めるものだというようなことを書いています。それは小説など「物を書く」こともそうなのでしょう。走ることに理由などない。

村上春樹が瀬古利彦さんに「走るのしんどく思ったことないですか」と聞いた時のエピソードの中で、瀬古さんが目をまん丸にして「当たり前ですよ、そんなのしょっちゅうですよ!」とのくだり、僕も今から10km走ってこようと玄関で靴紐を結んでいる時、少なくともワクワクはしていないのですよね。何も考えずにランニングウエアに着替え、シューズをはき、iPhoneの「Runkeeper」を起動させて「ランニングを開始する」を押し、黙々と走り始める。考えたとして、今日は身体重いかな軽いかな(走り始めてみないとその日の調子は分からない)ということと、今日は何を聴きながら走ろうかな、くらい。

走ることに対して何も考えない。走るべくして走っている。それだけのような気がします。もちろん走っている間の一時間くらいはずっと一人なので、あれこれと考えていますし、それが脳の中に散らかった情報のデフラグに役立つことはあったとしても、人にあえて言う程のことは考えてはいない訳です。

なんとなく村上春樹は苦手で、数年前まではレイモンド・カーヴァーの翻訳集くらいしか手に取らなかったのに、最近になって自分の趣味というか興味の対象が、村上さんのそれとびっくりする程マッチしていて、これは何だろうと不思議に思い始めました。スコッチウイスキーしかり、マラソンしかり、物を書くということしかり。

もちろん、全ての分野において僕は彼の足元にも及ばないのだけれど、ここまでマッチすると不思議な親近感が沸いてくるというのもまた人の心というものでしょうか。市民ランナー全員の気持ちを村上さんが代弁してくれるのはありがたいとも思いますし。彼は小説を書くこととマラソンは似ていると述べていますが、僕もこうして10年近くブログを書いている中で、同じように思うことがあります。ちゃんと調べたことはないけれど、ブロガーの中にはランナーが多いんじゃないかな。

そんなことを考える日曜日です。

ああ、まどろんだ思考を叩き起こすカフェのコーヒーが美味しい。