人口減少に対応して、開発した宅地を「自然」に戻していくという試みは生まれてこないのだろうか


戦後の高度成長期と人口増加による住宅需要を補うために山野を切り拓いて開発した宅地を、人口が減って誰も住まなくなったから自然の状態に戻して行く事業(あるいはビジネスモデル)って出来ないのだろうか、と考えています。人口減少時代に対応する「散らかしたものは元に戻しましょう」事業。子供の頭で考えても理にかなっている事だと思うのだけど。

ではまず、人口減少と住宅供給の矛盾から考えてみたいと思います。

世界的に見れば人口は増加して行くのですが、日本の人口は40年後には4000万人少なくなります。今の人口の30%が減るんですよね。国立社会保障・人口問題研究所の人口推計によると、日本は2008年をピークに減少期に入っており、2048年には人口が1億人を割り、2050年には9700万人、2060年には8700万人になるとのこと。つまり2030年(今からたった17年後!)以降は、毎年約100万人ずつ人口が減っていくことになるわけだから、そもそも家も土地もどんどん価値を失っていく訳です。住む人がいないんだから。

普通に考えると40年後には、今建っている家の1/3、いや、今は住宅が大量在庫を抱えている供給過剰だから、ひょっとすると2戸に1戸くらいが空き家になるんですよね。移民政策、人口増加政策などを考えない限り、もう住宅地も、高層マンションもスッカスカになります。特に農村や郊外では顕著に現れるのでは。(総務書統計局のHP参照

今から40年後というと結構近い将来です。今から家を買って35年ローンを組んだとしても、もしかしてまだ払い続けているかもしれません。資産価値がなくなって、周りの空き地や空き家がタダ同然で売られているのを尻目に、小さな土地や家やマンションの高額なローンを払い続けるのなんて切な過ぎます。高度経済成長期に住宅が少なくなって、マイホーム志向が強まった世代に育てられた30代、40代はまだマイホーム志向の影響が強いのかな・・・。今でもすでに家は売れなくなって来ていますが。(ビジネスジャーナル:マンションなんて、買ってはいけない〜新築の9割売れ残り?人気エリアでもマンションが売れないワケ)。

話は変わりますが、週末ですから新築マンションの広告が山のように入ります。どこも販売に苦戦しているみたいで、「増税前の今が買い時、金利の低い今がローンの組み時」と煽っているのですが、そもそもデフレ時期にローン組むなというのは経済学的には当たり前(物の価値は下がって行くし、給料も下がり続けるのに、ローンの支払いはずっと変わらない。一般的に平均的な給与のピークは43歳くらい)の事を煽るのってどうなんだろう。そして極めつけは、「買っても分譲貸しとして貸せますから損はしません」という宣伝文句。ついにここまで来たか、という感じです。見るとマイナーな駅から徒歩15分の不便なところ。将来的に貸せる保障がどこにあるんだろう。うちは大阪、三ノ宮の両方に10分で行ける人気の駅から徒歩3分のところで賃貸マンションを経営していますが、それでも空きがあるんですよね。僕から言わせてみると、そんな立地のマンションで「買っても貸せるから大丈夫」というのは”詐欺”でしかありません。しかも結構高い家賃を設定してシミュレーションしているし。人口減少時代に住宅在庫は山積みの中、誰が借りてくれるの?と思うのです。もちろん、買い手も少なくなるので、売却も年々厳しくなるでしょう。今、資金が潤沢にある人は家を買っても良いと思いますが、無理なローンを30年以上も組むのは余りにリスクが高い。

この減少は何も住宅に限ったことではなく、グランフロント大阪のような新しいオフィスビルでも同じです。結局、今入居している企業のほとんどは、大阪の地場に自社ビルを構えていた会社が、それらを売却して入居しているか、半径数キロ以内のオフィスビルに入居していた企業が近所から移動して来たかしかないんですよね。人口と同じで、新しく会社が生まれる訳でも、外資系企業が大阪に進出してくる訳でもない(むしろリーマン以降、撤退している)。だから結局、入居率は30%台推移しているし、新しいビルがどんどん出来たとしても近所の古いビルがガラ空きになるだけなんですよね。梅田から盛り上がると、本町が過疎化するのと同じです。根本的に需要が増えないと、何の解決にもなりません。

さて、話が逸れてしまいましたが、子供の頭で考えても矛盾があり、近い将来、コンクリートと鉄くずだらけのゴーストタウンになることが分かっているものを新しく建設することはやめて、今あるもの(高速道路や橋梁など)を補修することと、人口が減少している地域の宅地や空き家をどんどん山野に戻す事業、自然復元事業を国レベルで推進してはどうでしょうか。

もう山野を切り拓いての宅地造成はしない。
逆に必要のないものは壊すか放置して、環境保護区に指定して国が管理し、どんどん山野に戻す(住みたい人がいれば、適正価格で売却)。そうすることで土地や住宅の需給のバランスが取れて価格も健全な水準で安定するし、資源も無駄にならないし、環境にも良い。消費者をあの手この手で騙してローンを組ませて利子を払わせて搾取し、今だけの利益を確保して無理やり経済を回そうとするのであれば、マイホーム減税や住宅ローン減税をなくして税金を少し高くしても構わないから、その分、「散らかしたものを自然に戻そう事業」に補助を出すこと、医療や環境、テクノロジー分野に注力して、未来の日本を作る方にシフトチェンジすれば良いと思うのですが。ちょっと過激な考えでしょうか。

人口減少に対応して、開発した宅地を「自然」に戻していくという試みは生まれてこないのだろうか」への7件のフィードバック

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  4. 賛成です。逆開発とても必要だと思います。日本だと小湊鉄道周辺くらいしか例がないですね。
    ゴーストタウン化した町や高齢化で人口減が進んだ昭和のニュータウンの一部あたりがまず候補でしょうか。需要が期待できない部分は国有地として国が買い取り森林等に戻していくべきだと思います。外国人の爆買いが進んでいいる地域もあり国防上心配なので是非国に動いて欲しいです。

    • コメントありがとうございます。賛成いただいてありがとうございます。森林に戻していく逆開発いいですよね。切り拓いたものは、畳んでいくという発想しかないのではと思います。コロナ禍で密から疎への動きが加速してはいますが、若干の人の移動だけでは空き家だらけのニュータウンや過疎地の空き家問題は解決されません。最近はリモートワークの定着で都心のビルからの撤退も相次いでいるようで、都市の空洞化も進みそうですが。

  5. 私も賛成です。同じことを考えてそういう活動はないかと探していたところ、ここに辿り着きました。
    どうすれば実現できるのでしょうか。個人の思いではどうにもならないのでしょうか。経済的にはプラスにならないのかもしれませんが、長い目でみると大事なことだと思います。

    • コメントいただき、ありがとうございます。そして、賛成いただいてとても嬉しいです。一番良いのは「撤退戦」の経済成長モデルが確立されることなのですが、今のモデルでは右肩上がりの曲線が基本なので難しいでしょうね。あるいは、国家事業として国がお金を出し、森林化を進めていく他ないかと思います。無駄なコストを排除して原資を捻出すること、オートメーション化を目標としてロボット開発等に資金を出すことも必要かと思います。自然のものは自然に帰す。経済と両立できれば最高ですね。

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